質感認知メカニズムと工学的応用・感性価値への展開

再開催を依頼する / 関連するセミナー・出版物を探す
会場 開催

日時

開催予定

プログラム

第1部 質感認知メカニズムの総合的理解に向けた基礎研究の現状と工学的応用への展望

(2016年7月13日 10:40〜12:00)

 近年、「質感」が心理学や脳科学における大きなテーマの一つとなりつつある。質感は、英語圏では物体の材質 (material) の知覚を指すことが多いが、日本語では、映像の質感とか楽器の音の質感というように、より広い意味で使われる。それは、複雑で捉えがたい感覚信号のパタンから何らかの安定した知覚表現を取り出す能力と関連している。この能力は、脳のどのような情報処理に支えられているのだろうか?  本講演では、その謎に挑む基礎研究の最新成果を様々なデモや錯覚を交えて紹介するとともに、それらが指し示す質感認知の理論が通信から工芸まで様々な技術分野にどのように応用されうるかを議論する。

  1. 視覚情報処理の基礎
  2. 質感をどのように知覚するか?
  3. 複雑な現実世界
  4. 自然画像の統計学
  5. ヒューリスティクス
  6. 一目でわかる質感とわからない質感
  7. 視覚・聴覚・触覚における質感の認知
  8. ディープラーニングの利用
  9. 映像や音声の「質感」
  10. 質感の情動効果に関する実験と理論

第2部 視覚予測が触感などの体性感覚に与える影響とその法則性

~複合感覚におけるクロスモーダル期待効果~

(2016年7月13日 12:50〜13:50)

 事前の予測や期待が、事後の知覚に与える影響を期待効果とよぶ。たとえば、見た目で予想した触感や重さは、それらを触った時、あるいは持ち上げた時の触感や重さの体験を変えてしまうことがある。この様に、事前の感覚 (視覚) が事後の異なる感覚 (体性感覚) に影響する効果を、クロスモーダル期待効果とよんでいる。視覚や触覚など複合感覚により知覚される質感において、クロスモーダル期待効果がどの様に生じるかを理解することは重要である。  本講演では、クロスモーダル期待効果の評価方法、および、その背後にある法則性について、講師の最近の研究成果を紹介する。

  1. 感性設計学について
  2. 感覚の状態遷移からなるユーザ体験
  3. 期待と実際の不一致
  4. クロスモーダル
  5. 見た目が触感を変える
  6. 素材感の仮想合成
  7. 二つの期待効果
    • 同化と対比
  8. 神経符号化にもとづく知覚の計算モデル
  9. 期待効果の因子
    • 予測誤差
    • 不確実性
    • 外乱
  10. 期待効果の数値シミュレーション
  11. 対比としてのSize-weightillusion
  12. 期待効果の法則性から発見された同化としてのSize-weightillusion
  13. 期待効果の意味
  14. クロスモーダルを超えて

第3部 ヒトを対象とした質感と対人魅力の認知およびその応用展望

(2016年7月13日 14:05〜15:25)

 ヒトやモノの内面 (パーソナリティ、スペック、特性、遺伝子) は外からは見えません。それだけに、ヒトは外見からそのものの内面を推定しようとします。そこには、見かけがよいと中身もよい (その逆も然り) と感じ取ろうとする「こころ」の働きがあり、見た目から得られる印象に抗うことができないことが多々あります。ただし、見かけからその人の内面を理解していると思っていることは、単なる思い込みに過ぎないことも多いのですが、その人のこころや健康に関するいくつもの側面が顔や姿などの特定の特徴に外見に現れていることも明らかになりつつあります。  本講演では、ヒトが他者のどのような外見的手がかりから魅力 (健康や年齢推定についても) を感じるのか、対人的外見の質感 (肌、顔形態、声、など) に焦点を当てながら、最終的に感じられる魅力の心理的、神経的過程について述べるとともに、ヒトやモノの外見が重要となる消費者行動やデザイン、工学的応用可能性について解説します。

  1. 魅力や対人印象はどのような過程で感じられるか
    1. ヒトはどのように外見を重視し、どのような情報を得ようとするのか
    2. 外見はヒトのどのような内面を反映しているのか、適応範囲、限界と認知バイアス
    3. 魅力の認知過程と、認知への影響力
    4. 魅力認知の心理学的、脳神経科学的基礎
  2. 対人魅力に関与する手がかり特徴と対応する印象特性と健康特性の基礎
    1. 肌色、肌質、肌特徴、化粧肌
    2. 顔形態と内分泌系 (ホルモン)
    3. 顔の質感情報の個人内変動と個人差、性差、文化差
  3. 魅力認知研究のフレームワークの他分野への応用可能性
    1. キャラクターデザイン、CG、アバター、化粧表現
    2. 広告表現、言語表現
    3. 日常生活に捉えられる魅力と商品応用

第4部 質感・情動を取り巻く研究・技術の産業的応用へのノウハウ

~質感マネージメント技術と感性・情動工学~

(2016年7月13日 15:40〜17:00)

 3Dプリンターで様々な形・質感の製品を出力可能な時代に、これまで印刷・プリント・ディスプレイ等の分野で培われてきたカラーマネージメント技術は、質感マネージメント技術へと進化することが求められている。  講演では、質感マネージメントに関して講演者が構築したフレームワークを事例とともに紹介する。質感を感じるのは人間の感性であり情動であり、講演者は情動を非接触で簡易に計測する手法を実現しており、 産業応用と関係づけて紹介する。

  1. 電子商取引とカラーマネッジメント
  2. 電子商取引と質感マネッジメント
  3. 質感パラメータのワンショット撮影法
  4. 質感制御技術と質感再現法
  5. 質感恒常性のモデル化
  6. 情動計測の基礎
  7. 安価なカメラを用いたストレス計測
  8. 安価なカメラを用いた情動計測
  9. 質感工学、情動工学の産業応用の展望

会場

品川区立総合区民会館 きゅりあん
140-0011 東京都 品川区 東大井5丁目18-1
品川区立総合区民会館 きゅりあんの地図

受講料

複数名同時受講の割引特典について