超高齢社会を迎え、OAは大きな社会的問題となっている。臨床現場では、関節痛が最大の愁訴であるため、非ステロイド性消炎鎮痛剤 (NSAIDs) が主に処方され、無効例には人工膝関節置換術 (Total knee arthroplasty、 TKA) が勧められてきた。最近の研究で、NSAIDsの長期処方が心事故の原因となることが示唆された。さらに、欧米を中心とした爆発的TKA症例数増加を契機に、TKAの反省が生まれてきた。すなわち、術後に残る膝関節痛の問題である。 現場が望むことは、OA進行を抑制 (修飾) する新規薬剤Disease Modifying Anti – OA Drugs (DMOADs) の開発であり、ヒアルロン酸に代表される関節内注入療法の一部には、その効果が期待された。しかしながら、各OA治療ガイドラインの記載には不一致が認められる。さらに薬剤開発における最大のツールである「疾患マーカー」の問題点もクリアされていない。OAは従来肥満を基とする軟骨に対する機械的負荷が最大の原因とされてきた。しかし、近年の研究は、「慢性炎症」がその基盤であることを明らかにした。このパラダイムシフトに伴い、DMOADs開発戦略や臨床治験の進め方に変更が余儀なくされた。 本セミナーでは、これらの最新の知見をふまえ、臨床現場からの要望にこたえる新薬開発のヒントを提供したい。