プラスチック素材は粘弾性という、弾性的な性質と粘性的な性質が混在します。材料に力を加えると変形しますが、この力と変形は材料固有の定数 (弾性係数) と比例関係にあります。プラスチック素材の弾性率は、粘弾性により他の材料に比べ時間や温度によって極端に変化します。この弾性率の時間及び温度による変化を粘弾性特性 (挙動) といいます。この挙動に伴って、プラスチックの力や変形は室温から高温度領域において複雑な振る舞いをします。粘弾性特性を解釈することで、各種成形機を用いた時の残留ひずみの少ない成形温度条件の選定、成形時に生ずる残留応力の発生メカニズム、突如起こる成形不良の対策法、残留応力除去のためのアニーリング条件、成形時に残留ひずみが残り易い素材かの可否、素材の独自管理、数値解析に有用な材料特性の提供、粘弾性特性に成立する時間-温度換算則を用いた強度や変形の変化割合の長期予測、シミュレーション時のデータの取り扱い等々が感や経験に頼らず定量的に行えることが理解できます。
ここでは、プラスチックの粘弾性特性の測定方法や解釈法とそれに基づいた上記事象の取り扱い方法について平易に説明します。また、ひずみ・変形を極力低減可能な新成形方法である射出圧空成形法をご紹介します。
- プラスチックの粘弾性特性の解釈/理解
- 粘弾性特性とは
- 粘弾性特性の解釈法と利用方法
- 粘弾性に伴う特異現象 (クリープ挙動、緩和挙動)
- 粘弾性特性と力と変形の関係の解釈/理解
- プラスチックの応力とひずみ
- 粘弾性挙動と粘弾性モデル
- 応力とひずみの関係式 (構成方程式)
- 粘弾性特性と成形時に生ずる残留応力の関係の解釈/理解
- 残留応力発生要因の分類
- 硬化収縮による残留応力発生メカニズム
- 粘弾性挙動による残留応力発生メカニズム
- 残留応力の基礎式
- 理論的・実験的解析手法
- 残留応力の低減方法
- 粘弾性特性の時間-温度換算則の解釈/理解とその応用法
- 時間-温度換算則の基礎概念
- 時間-温度移動因子 (アーレニュウス型、WLF型)
- 残留応力開放に伴う変形の長期予測手法
- 強度並びに変形の長期予測手法と信頼性評価手法
- ひずみ・変形の低減を可能にする新射出成形法の紹介
- 液状発泡剤による射出発泡成形法
- 新射出中空成形法
- 射出圧空成形法
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