プラスチックの成型品の弾性率、強度等の特性は負荷の速度に大きく影響される。ゆっくりとした負荷では塑性変形を起こして大きく延性的に変形するプラスチックでも、早い速度での衝撃的な変形では小さなひずみで脆性的に破壊する。脆性的な破壊はそれが開始してから私達が力を製品から除いても破壊を止めることはできない。一方延性な製品は破壊が開始したときそれから力を除くと変形はその時点で停止する。プラスチックの成型品は、脆性的な破壊を起こすより延性的に変形する、言い換えるとタフであることが製品を安心して使用するには優れている。
プラスチック成型品の形状そしてその製品に用いる高分子材料にどのような改質を施せば、衝撃的な負荷での脆性破壊を抑制し、信頼性に優れたとタフである製品が設計出来るであろうか。それを知るにはプラスチック成型品の塑性変形と破壊の機構を学ぶことが必要である。本セミナーではプラスチックの破壊機構とそれに基づくタフニングを紹介する。
- はじめに
- 固体高分子材料の変形
- 固体の変形の基礎
- せん断変形が支配的な変形
- 体積変形が支配的な変形
- ひずみの拘束による応力集中の機構
- 高分子材料の延性的破壊 (せん断変形支配)
- 結晶性高分子材料の塑性変形
- 非晶性ガラス状高分子材料の塑性変形
- 高分子材料のソフトニングとネッキング
- 配向硬化
- 延性破壊
- 熱可塑性高分子の延性破壊
- 熱硬化性高分子の破壊
- 変形速度が一軸伸張の塑性変形に及ぼす影響
- クリープ負荷での塑性変形
- 高分子材料のぜい性的破壊 (体積変型支配)
- ボイドの形成とその不安定拡張
- 切り欠きの拘束によるボイドの不安定拡張
- ひずみの拘束による高分子材料のぜい性破壊
- 非晶性ガラス状高分子のぜい性的破壊
- 結晶性高分子のぜい性的な破壊
- 変形速度が破壊挙動に及ぼす影響
- 切り欠きを持つ結晶性高分子のクリープによるぜい性破壊
- アルミニュウム合金の破壊との比較
- 高分子材料の破壊条件と破壊力学
- デサインの調整によるタフニング
- 構造体のひずみの拘束と変形の安定性
- 非晶性ガラス状高分子 (ポリカーボネィト (PC) ) の強度設計
- PC構造体の破壊条件の推定
- 種々の境界条件でのPC構造体のタフネスの予測
- 切り欠き先端半径の効果
- リガメントの厚さの効果
- 試験片の幅の効果
- 結晶性高分子 (ポリオキシメチレン (POM) ) の強度設計
- POMの真応力 – ひずみ曲線とボイドの形成と拡張状態の推定
- POMの破壊条件の推定
- 種々の境界条件でのPOM構造体のタフネスの予測
- 切り欠きの先端半径の効果
- リガメントの厚さの効果
- 試験片の幅の効果
- 微細構造の調整によるタフニング
- 数平均分子量がクレイズ強度と降伏応力に及ぼす影響
- 分子量分布の幅がクレイズ強度と粘度に及ぼす影響
- i-PPの立体規則性がクレイズ強度に及ぼす影響
- 共重合がクレイズ強度と降伏応力に及ぼす影響
- ひずみの拘束の解放によるタフニング
- ボイドによる体積弾性率の緩和とひずみの拘束の解放
- ボイドの分散状態が塑性不安定に及ぼす影響
- Gursonモデルを用いた非線形解析 (関連流動則) によるポリマーアロイのタフネスの予測
- 修正Gurson (非関連流動則) モデルよるポリマーアロイのタフネスの予測
- エラストマーのブレンドによるタフニングの効率に影響する因子
- 分散相の強度がタフネスに及ぼす影響6.2.2複合構造のエラストマーとタフネス
- マトリックス樹脂の配向硬化とタフネス
- 部分架橋による配向硬化の調整
- 結晶化条件による配向硬化の調整
- エラストマーの配向がタフネスに及ぼす影響
- 表面劣化によるぜい性化のエラストマーブレンドによる抑制
- 他の体積弾性率の緩和につての試み
- 高い剛性とタフネスが両立したプラスチック複合材料の強度設計
- 無機微粒子のブレンドによるタフニング
- 繊維の充填によるタフニング
- 繊維と樹脂が強い界面強度を持つ場合
- 繊維と樹脂の界面が適切な強度ではく離
- はく離強度がタフネスに及ぼす効果
- 繊維長のアスペクト比がタフネスに及ぼす効果
- 繊維長への締め付け力がタフネスに及ぼす効果
- 界面強度の調整によるタフネスの改善の例
- 酸変性低分子量PE改質材によるガラス繊維充填PCのタフニング
- アラミド繊維によるPLAの弾性とタフネスの改善
- 終わり