本セミナーでは、LNG関連市場において豊富な知見を有する講師が、現在の天然ガスの動きと今後の見通しを展望する
中国における景気低迷、米国におけるシェール・ガス革命、原油価格下落により、LNG価格は、この1年間に大きく下落し、これまで活況を呈していたLNGプロジェクトの経済性に大きな影響を与えている。 米国におけるシェール・ガスをはじめとした非在来型天然ガスの生産増と天然ガス価格の下落によって、米国、カナダにおいて相次いでLNG輸出プロジェクトが進められている。2016年冬における暖冬もあって、米国における天然ガス価格は百万Btu (ブリティッシュ熱量単位) 当たり2ドルを割り込み、2016年2月には、米国本土初のサービン・パスLNGの輸出が始まった。さらに、欧州諸国への天然ガス販売が減少するロシアも、ヤマルLNG、サハリン3、ウラジオストックLNGをはじめとしてアジア大洋州へのLNG輸出計画を進めている。豪州は、現時点における計画では、2018年には世界最大のLNG輸出国となる。 こうした米国、カナダ、ロシア、豪州、インドネシアをはじめとした数多くのLNG輸出プロジェクトによって、世界はLNGバブルの活況を2014年に呈したものの、2015年以降には、LNGプロジェクトを取り巻く環境は急速に変貌している。2014年2月に百万Btu当たり20.5ドルという過去最高値となったLNGスポット価格は、2016年3月には6ドルを割り込み、4分の1近くに暴落している。これは、①米国からのシェール・ガスを原料としたLNGの輸出開始、中国および欧州におけるLNG輸入の伸び悩みにより、世界的にLNG需給の緩和が進んでいること、②日本のLNGの在庫が積み上がっていること、③豪州のLNGプロジェクトが相次いで稼働し、豪州、インドネシアのLNGにも余剰感が強まっていること、等の要因が挙げられる。 LNG市場は、従来の売り手市場から買い手市場へと大きく変貌した。原油価格連動を中心とした、LNGの購入形態、価格決定方式も見直しが進められている。これまで、LNGプロジェクトに参画してきた産油国、メジャー (国際石油資本) 、総合商社、プラント・メーカー、重電メーカーは、LNG価格の下落、2016年以降における供給過剰に直面し、シェブロン等は、LNGプロジェクトの先送りを行っている。日本企業はLNGプラント、LNG専用船の建設・運転・保守に関連する世界最先端の技術を持っており、2016年夏以降におけるLNGプロジェクトに関連するビジネス・チャンスとリスク、勝ち残りの経営戦略について、シェール・ガスとLNG分野の第一人者が明確に解説する。