21世紀の今、世界は低炭素社会、水素社会構築へと舵を切っている。2014年12月15日には、世界最初の量産型燃料電池車MIRAI (ミライ) を、トヨタ自動車が発売し、2016年3月10日にはホンダがクラリティーを発売開始している。ミライの本体価格723万6,000円、政府による補助金202万円を差し引くと、521万円とハイブリッド車クラウン並みの価格で購入できるようになり、2015年12月時点における受注台数は3,300台に達し、年間受注目標400台を大きく上回る。2014年6月には、経済産業省が「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を発表し、定置型燃料電池、燃料電池車の普及、水素供給システムの確立という目標を掲げている。日本では、世界でいち早く量産化された家庭用燃料電池 (エネファーム) は、2014年9月末には販売累計が10万台を突破し、2030年までに530万台に拡大するという意欲的な目標が出されている。 また、世界的に環境対応自動車の拡大が求められる中において、燃料電池車は、水素と酸素を反応させて電気を作る燃料電池による自動車として、水以外の汚染物質を一切出さず、究極のエコ・カーとされる。しかし、燃料電池車は、従来は1台1億円以上の生産コストがかかり、価格の高さが本格的な普及のネックとなっていた。しかし、2016年以降には、日本が世界に先駆けて、安価な燃料電池車の普及を計画し、2025年には世界で180万台、日本で20万台の燃料電池車が販売され、世界の水素ステーションは3,100ヵ所に達すると見込まれる。水素ステーションは、1基5億円するものの、政府は、2016年3月に、燃料電池車普及の強化を一段と強め、現在80ヵ所ある水素ステーションを、2020年に160ヵ所、2025年に320ヵ所、燃料電池車を2020年に4万台、2030年に80万台とする具体的数値目標を、初めて設定した。 今後2030年に向けて、次世代自動車用燃料として、水素、天然ガスの利用が大幅に増加することが確実であり、シェール・ガス革命による豊富な天然ガス、LPガスを原料とした水素製造も可能となっている。2030年には国内の水素市場は1兆円、2050年には、水素ステーション、燃料電池車、水素発電所をはじめとした水素インフラストラクチャー市場は、日本で8兆円、世界で160兆円もの規模に達する大きなビジネス・チャンスが期待できる。 家庭用燃料電池、燃料電池車、水素ステーションをはじめとした水素エネルギーを取り巻く最新動向と今後の事業機会について資源エネルギーの第一人者が的確に詳説する。