本セミナーでは、スクリーン印刷の原理やメカニズムおよび要素技術について説明し、具体的な応用例と実践方法まで分かりやすく解説いたします。
スクリーン印刷は、エレクトロニクスやグラフィック・加飾印刷などの多くの分野で60年以上の長きにわたり利用されてきたにも関わらず、未だに管理が困難で職人技が必要だと思われています。そろそろ考え方を変えて、スクリーン印刷自体が管理困難だったのではなく、今までの管理手法が間違っていたと認識を新たにすべきです。 スクリーン印刷にも理論があります。印刷されるインク、ペーストの身になってプロセスを考える「ペーストプロセス理論」です。この理論は、私が長年にわたり仮説と検証を繰り返し実用性がある考え方として確立し、多くの印刷現場で実証を行なってきたものです。 エレクトロニクス分野のみならず、グラフィック、加飾、捺染などでの高品質スクリーン印刷実践のためであれば、すべてに通用する考え方です。 スクリーン印刷に対する先入観を捨て、論理的整合性の観点から評価いただければこの理論の正しさが理解していただけると思います。これまでの対策での成功の理由も失敗の理由もこの理論で説明ができるようになります。この理論を実践すれば、スクリーン印刷は、今後の技術的伸び代が最も大きい印刷プロセスであることが実感できるはずです。 「ペーストプロセス理論」では、スクリーン印刷は、他の印刷にはない3つの要素があることで、最も安定性が高い印刷工法であると考えます。インクを押し出すスキージ、インクがその開口を通り抜けるためのメッシュ、そしてインクを瞬時に「版離れ」させる版の反発力です。スクリーン印刷は、これらの3つの要素があるため、他の印刷よりもかたい (高い粘弾性の) インクが使用できます。固いインクは基材上でのインクの形状保持性が高くダレ、にじみを抑制することができ、高品質で安定に連続印刷ができます。スクリーン印刷で難しいのは、印刷パラメータの設定ではなく、インク・ペーストの印刷性能の理解です。印刷プロセスの適正化とは、スクリーン印刷の本来の「あるべき姿」と比較して、なぜそれに達していないのか、何が原因かを見つけ出し、適正に対策することです。 そもそも印刷とは、先ず「刷版」の性能が向上し、それに合わせた印刷性の高いインクが開発され、それぞれの印刷品質を向上させてきました。このことはスクリーン印刷においても同様であり、「刷版」であるスクリーン版の主要素であるメッシュ材料の技術進歩により、使用できるインクの印刷性能がさらに向上します。高精細印刷のメッシュには、細い線径と高いメッシュ数、そして十分な強度が必要とされます。2012年、従来の3倍の強度を有する超高強度ステンレス650メッシュが開発され、スクリーン印刷の長年の課題であった、高精細印刷での「版離れ」と「版ひずみ」の課題が解決されました。そして、超高強度メッシュに適合した印刷性能が高い高粘弾性インクが数多く開発されることで、誰でもが高品質なスクリーン印刷を実践できる環境が整います。また、この超高強度メッシュでの印刷検証により「ペーストプロセス理論」の実効性が証明できたとも言えます。 本講演では、スクリーン印刷の原理やメカニズムおよび要素技術について説明し、インク・ペーストの粘性・弾性や濡れ性と印刷性能の相関を理解することで高品質印刷プロセスが高度に適正化できることを分りやすく解説します。さらに、最新のエレクトロニクスや高精細・高品位加飾印刷での具体的な応用例と実践方法についても詳しく解説します。