慢性的な痛みは、分類法や解釈には相変わらず異論もあるのが現状です。慢性的な痛みは罹病している本人に苦痛を与えることはもちろんですが、労働力の減少や医療費の増大をももたらし、社会全体に多大な影響を与えることが欧米を中心に強調されるようになって来たことも、「難治性疼痛」を「難治」のまま放置してはいけないという意識を広く喚起することに繋がっています。関心の高まりから、研究予算は、十分とは言えないものの、従前よりは格段に手当てされるようになり、神経生理学の一分野として、基礎研究の成果が集積しつつあります。 また、発症のメカニズムについての知見も深まりつつあると言えるでしょう。しかし、人間における“痛み“の研究の技術的困難さから、これまでのところ画期的な治療法はみつかっておらず、現状で臨床応用可能な手技は未だ限られているのが現状です。本講演では慢性疼痛に対する治療法の開発の現状と将来性について解説します。