物質の性質を考え、新しい性質を有する材料を作り出すことは、人々の生活のあらゆる場面に寄与する極めて重要な研究であるといえる。メタマテリアルの研究とは、いわばその究極系であり、物質の‘誘電率’と‘透磁率’を自在にコントロールすることで、あらゆる性質を持った材料を生み出すことを目的としている。「メタマテリアル」という言葉を直訳すると「超越物質」となるが、その名前からも「従来の概念を超えた究極の物質を作り出す」という先人たちの熱き思いが込められていることは、想像に難くない。 メタマテリアルの研究で最も注目される領域は、いわゆる屈折率が負になる領域であり、これは誘電率と透磁率を同時に負にすることによって実現される。この摩訶不思議な性質を利用することで、物理限界を超える集光や、光学的透明マントを作り出せることが示唆されており、それに向けて数多くの研究が行われている。 本講演では、そのようなメタマテリアルに関する基本原理の理解から、世界動向、今後の展望までを概観する。