UV硬化技術はコーティング、インキ、接着剤、フォトレジスト、エレクトロニクス部材、自動車関連部材など広い領域で表面加工技術として広く利用されている。この技術は高速で硬化できるので熱硬化に比べて経済的であり、溶剤を利用しないあるいは極度に低減できるので環境保全の立場からますます重要になってきている。この技術は①光源②フォーミュレーション (配合物:オリゴマー、モノマーおよび開始剤など硬化する材料) および③応用 (高速プロセス、用途など) の要素技術から成り立っており、原理的には簡単であるが、実用化に当たっては必ず理解しておかないとトラブルを起こすことがある。
本講ではUV硬化を利用するにあたっての必須事項 ( (I) 光源、 (II) フォーミュレーション、 (III) 硬化過程の評価、硬化物の評価) の解説とトラブル対策 (酸素硬化阻害、硬化収縮、密着不良、黄変など) を中心に講義する。なお、講義の材料は塗料を中心とした。なお、最近の話題であるハイパーブランチポリマーの利用、チオール・エンUV硬化、無機ー有機ハイブリッド系UV硬化、UVアニオン硬化およびUV-LED硬化技術の動向についても紹介する。
- はじめに:UV硬化技術とはどのような技術か
- 原理と方法 (光源、配合物 (フォーミュレーション)
- 応用 (塗料、接着剤、インキ、フォトレジストなど)
- 光源の選択 (I) 光源
- 光源
- 高圧水銀ランプとメタルハライドランプの選択 (クリヤーコートと印刷インキ)
- 最近登場したUV-LEDおよびキセノンパルスランプなどの長所と短所:これらの光源を用途によってどう使い分けるか
- 光源の波長と開始剤との関係、光強度と硬化速度および密着の相関 (密着を確実にするための注意事項) )
- UVラジカル硬化 (1) (II) フォーミュレーションの基礎と具体例
- UVラジカル硬化の原理
- 開始剤の選択
- 開始剤がなぜ必要か
- 光源とのマッチングとは何か
- 短波長硬化と長波長硬化の違いと利用法
[例:紫外線吸収剤共存下でのUV硬化 (耐侯性硬化物) 、着色物のUV硬化など]
- モノマーおよびオリゴマーの選択 (硬化物の物性を決める材料の選定方法)
- 高分子の基礎物性からみたモノマーおよびオリゴマーの選択法
- モノマーおよびオリゴマーの構造と選択法:塗膜の硬さおよび伸び率を調製する具体例
- 硬化収縮とその対策:ハイパーブランチポリマーの利用
- 塗膜の硬さおよび伸び率を調製する具体例
- UVラジカル硬化 (2)
- 酸素硬化阻害対策法
- 添加物の利用 (アミン、エーテルなど)
- チオール・エンUV硬化
- UV硬化物の黄変〈UV硬化後の黄変〉
- 硬化物の耐候性〈黄変および脆化〉
- UVカチオン硬化:酸素共存下でも利用できる硬化法
- UVカチオン硬化の長所と欠点
- 開始剤 (光酸発生剤) からの酸発生機構と重合開始活性
- モノマー (エポキシ化合物) の構造と硬化性
- モノマー (エポキシ化合物) の構造と硬化性
- UVカチオン硬化の加速:増感剤の利用、モノマーの選択 (オキセタン、ビニルエーテルの併用など)
- UVカチオン硬化の応用:離型紙の表面加工および光ゾル-ゲル法
- UVアニオン硬化:新しいUV硬化法の提案
- UVアニオン硬化の意義
- 光塩基発生剤の開発動向
- UVアニオン硬化の実用化に向けて
- 現状と展望
- 瞬間接着剤
- 感光性ポリイミド
- 塗料など
- 硬化過程の追跡法と硬化物の評価 (III) 硬化過程および硬化物の評価
- 硬化過程の追跡
- Photo-DSC (光熱分析法)
- RT(リアルタイム)-FTIRによる硬化過程の追跡
- レーザーラーマン分光分析
- 製造工程でのリアルタイム硬化追跡法 (1) 近赤外反射法の利用 2) 蛍光の利用)
- 硬化物の評価 (ハードコートの評価)
- 指触法
- ラビングテスト:耐溶剤摩耗性 (メチルエチルケトンなど)
- 鉛筆硬度 (基板の硬度に注意)
- 密着試験 (クロスカット試験)
- ユニバーサル硬度:フィッシャー硬度計 (微小圧子によるへこみの程度評価と弾性率評価)
- デュアル硬化法
- 光があたらないところの硬化 (光と熱、光と湿気の利用)
- 基材との密着および密着不良対策法
- おわりに