残留応力は、部材内部に残存している応力である。機械設計時には、使用時の負荷応力を主体とした強度設計が主体となり、残留応力の存在はあまり考慮しない。しかし、この残留応力が損傷要因となって、しばし不具合が発生している。一方、機械構成部品、特にバネ、軸受、ネジ、歯車等の機械要素には積極的に残留応力を活用しており、品質管理はこの残留応力導入の管理といっても過言ではない。部品の寿命、耐久性はこの残留応力値で大きく変化する。残留応力の管理値は、部品メーカのノウハウであり、一切公開されていない。また、残留応力の計測方法も非公開な場合が多い。残留応力を計測、評価することは製造現場では重要な技術であるとともに、対象製品に最適な残留応力計測手法が研究・開発されており、実用化されている。さらに、最近では小型Ⅹ線応力計測装置が実用化されており、タンク、配管、橋梁、鉄道などの大型インフラ設備に対して、現地で実応力負荷計測にも採用されつつある。 残留応力の計測には、部材を細かく切断して内部応力を解放する破壊試験法、ひずみゲージ近傍に穿孔して局部的にひずみ解法する準非破壊試験法、Ⅹ線、中性子などの放射線回折による結晶格子間隔変化を計測する方法、磁性変化、音速などの物性値変化による応力計測法等の非破壊試験法が実用化されている。 本講習会では、このような残留応力の一般的な技術背景、個々の計測方法について紹介、実計測時の注意点、計測値の評価、課題などを詳細に紹介する。