コンピュータ技術の進歩に伴い、クロマトグラム、多次元データ、画像データなどは紙生データから電子生データへとユーザーの意識が変わりつつある。一方、PIC/SおよびFDAの査察においてデータインテグリティ不適合 (データ完全性不適合) との指摘が近年目立ち始めている (2013年〜2014年 PIC/S:8件 FDA:20件) 。以下のFDA指摘を見ると、紙が生データであっても電子記録の保存が求められつつあるのが判る。
- HPLC、IR、UV、水分計、粒径測定器などに付属するPC中のデータを変更・削除できてしまう
- ラボ機器の生データは、グラフ、電子記録を含んですべて保存すること
- FTIR、UV、粒径測定器などの測定器や分析装置の電子生データをバックアップしていない
一方、MHRA (英国医薬品庁) が2015年に発出したデータインテグリティガイダンスは、監査証跡のレビューを含んだデータレビューを求めている。監査証跡のレビューはもともとPIC/S Annex11 において求められていたが、MHRAガイダンスにおいて「監査証跡によるデータレビュー」という具体的な要件となった。WHO (世界保健機構) のデータインテグリティガイダンスも同様のことを求めており、FDA査察において以下の指摘が散見される。
- データレビューにおいて監査証跡をレビューしていない
本講座では、PIC/SとFDAの査察指摘、およびMHRAのデータインテグリティ・ガイダンスを紹介し、PIC/Sのコンピュータ要件に適合した生データの電子化とスプレッドシートのバリデーションを体系的に説明する。
ERES/CSVに精通していない方にも理解していただけるよう、ERES/CSVの基礎から説明する。また、400スライドを超えるテキストと付録CDに収載する豊富な資料により、日欧米3極のコンピュータ要件について後日の復習やさらなる自習が可能である。
- ER/ES:Electronic Records, Electronic Signatures (電子記録、電子署名)
- CSV:Computerized System Validation (コンピュータ化システムバリデーション)
- 電子記録・電子署名の基礎
- ERES指針、Part 11、Annex 11の位置づけ
- 真正性、見読性、保存性、監査証跡
- オープンシステム、デジタル署名
- 生データの電子化対応
- 紙生データHPLCに対するFDAコンピュータ指摘
- 生データと監査証跡対象の規定
- バックアップとアーカイブ
- CSVの基礎
- バリデーションのVモデル
- DQとリスクアセスメント
- トレーサビリティマトリクス
- GAMP 5のポイント
- カテゴリ混在時のバリデーション
- 基盤ソフトウエアのバリデーション
- コンピュータ化システム適正管理ガイドライン
- コンピュータ査察の基本方針
- 既設システムのバリデーション
- 機器/装置のバリデーション
- FDA Part 11 規則とガイダンス
- FDAのコンピュータ指摘方法
- FDAのコンピュータ指摘107件の紹介
- スプレッドシート (エクセル) をバリデートしていない
- サンプル数をエクセルで管理しているがその真正性を証明できない
- クロマトグラム生データを削除できてしまう
- 監査証跡をチェックした記録がない
- HPLCの電子生データが残されていない
- 共有ID/パスワードによる運用となっている
- PIC/SとFDAのデータインテグリティ不適合指摘
- IDとパスワードを共用している
- 良い結果が出るまで試し分析を繰り返している
- 試し分析結果のクロマト生データを削除している
- 試し分析を機器使用台帳に記録していない
- メソッドをだれでも変更できてしまう
- 電子記録の変更を監査証跡により監視していない
- PIC/Sのコンピュータ要件
- 監査証跡の規則的レビュー (Annex 11)
- 生データとする電子記録を規定 (PIC/S GMP)
- 監査証跡対象の記録を規定 (査察官向けガイダンス)
- カテゴリ3に対するDQ (Annex 11)
- 待避データの見読性維持 (Annex 11)
- エクセル・スプレッドシートの管理 (EMA Q&A)
- MHRAのデータインテグリティ・ガイダンス
- 監査証跡のレビュー
- データレビュー
- 共通ログイン
- システム管理者
- 監査証跡のバリデーション
- データインテグリティの自己点検
- スプレッドシートのバリデーション
- 質疑応答
- 本セミナーの内容に関し、日常の業務において困っていることや疑問などにお答えする。
事前質問大歓迎です。