熱流動シミュレーションをおこなう高機能な市販ソフトウェアが充実し、設計や開発の様々な段階での伝熱解析に利用されるようになりました。使い勝手もよくなりましたが、ともすればブラックボックス化の恐れもあります。「中身 (= 熱流動解析プログラムの基本) 」を理解していることは望ましいでしょう。いっぽうで、理解を深めることだけを目的に、個人で演習的にプログラムを自作するのはたいへんです。
講師の研究室では、熱流動シミュレーションをすべて自作のプログラムで行っています。本講座の内容は、講師の研究室において新たに数値解析を始める人を対象に、本格的なプログラムに触れる前段階として行っている「数値解析の基礎セ
ミナー」の内容をアレンジしたものです。計算はすべてExcel上で行い、FORTRANやCなどのプログラム言語の知識は不要です。熱流動シミュレーションの最も素朴な手法のひとつである有限体積法に基づき、簡単な熱伝導問題からはじめて、最
終的には2次元・定常・物性値一定の条件のもと運動方程式を連続の式とカップリングして解きます (SIMPLE法) 。
Excelを使うので、計算中のすべての変数およびその変化を視覚的にとらえることができます。これは、市販ソフトウェアや自作プログラムで計算する場合には通常見ることがない情報で、講師の経験上、「中身」の理解に大いに役立つと感じています。
また、簡単な伝熱問題をExcelで解きながら徐々にステップアップしますので、その過程で伝熱解析の基礎も学べます。
本講座では、はじめに伝熱工学の基礎を講義したうえで、受講者に事前配布するいくつかのExcelシートを利用しながら進めます。