人間を取り巻く社会環境が異なろうと、いつの時代でも人間の思いは同じで、健康で安心した生活を送りたいと願っている。“短命”より“長寿”が良いと誰もが思うことであろうが、そこには「心」と「からだ」の健康の両立が不可欠であろう。すなわち、自立した生活が出来る生存期間、いわゆる「健康寿命」の延伸は世界でも共通認識される目標であろう。 現在、わが国は世界のどの国も経験したことのない超高齢社会が急速に進んでおり、医療費削減や健康寿命の延伸を目指し、出来る限り医療施設に頼らず、在宅加療や日常の健康管理・疾病予防、看護・介護などを行うホームケアが推進されている。これらは従来の“治療型”から“予防型”医療へのパラダイムシフトであり、そのための「 (セルフ) ヘルスケア」の早急な社会基盤造りの推進が指摘されて久しいが、未だ効果的な結果が見えていないのも実情であろう。 本講義はこの原因を生体計測技術の側面から追及し、「健康長寿」という目標を達成するため、工学技術で何ができるか?今後の社会のあるべき姿は?を議論する一助となることを期待している。すなわち、一般に健康管理・予防にはバイタルサインを取得する生体計測は不可欠であり、特に身体を傷付けず(非 (無) 侵襲) に測る技術が必須となる。 本講義では、早期発見・長期観察を可能とし、ユーザーは勿論、医療従事者・介護者にも負担のかからない「いつでもどこでも<ユビキタス>ヘルスケアチェック」ができる最新のスマート・健康モニタリング技術について、その方法論の概要と開発事例を紹介する。さらに、これらの計測技術とICTを融合し、健康・安心生活を支援する次世代型のヘルスケア・スマートタウン構想を紹介しながら、本講義のまとめと今後の課題について述べたい。