本セミナーでは、布・繊維の基礎・力学特性から解説し、布、繊維の風合いの客観評価法について詳解いたします。
布の風合い (手触り、肌触り) は、明治に入って英国から紳士服が導入されて以来、テーラーや消費者から重要視されるようになった。戦後の物のない一時期を除いて、風合いの良いスーツを着ることが消費者の夢であった。合成繊維の普及と大量生産、大量消費の時代の中で風合いが軽視されることもあったが、現在では真に人間にフィットした風合いが求められている。 しかしながら、風合いを判断する専門的熟練者の不足化の中で、風合いの客観評価技術の必要性が叫ばれるようになった。川端、丹羽教授らは、風合い判断が微小な荷重レベルでの初期力学特性に基づいていることを見いだし、弊社と共同でKESシステムの設計、開発に成功した。日本繊維機械学会内に風合い計量と規格化研究委員会 (略称HESC) を組織し、基本風合い、総合風合いを定義し、布の風合い客観評価法の開発に成功した。本講座ではその詳細を解説する。 KES特性値を用いた風合い客観評価法は実に多くの分野で応用されている。例えば、シルクライクポリエステル織物の風合いがポリエステル織物に比べてどの程度天然シルク織物に接近しているかを定量的に把握可能である。仕上げ工程を経るに従い変化する布の風合いを追跡可能である。単にテキスタイル製品だけでなく、皮革、紙、ゴム、プラスチック、木材、等の人間が接する材料での応用が期待されている。