本講座の目標は、研究者やエンジニアの皆様が、限られた時間であっても的を射た特許明細書 (発明提案書) を書けるようになることです。また、知財担当の方が、重要なポイントを外さず的確に明細書をチェックし、評価できるようになることです。さらに、経営、知財、教育等をご担当の皆様が、事業にとって本当に必要な知的財産、特に特許権を戦略的に生み出すための手法を把握できるようになることです。これらの目標の先にあるのは、企業が、本当に事業の役に立つ特許を取り、本来得られるはずの利益を守れるようになることです。
講師は、元特許庁審査官で、エンジニアとしての経験も有する弁理士です。審査の実情、事業の現場の実情、並びに知財をめぐる法制度や経済情勢等の最新のトピックを踏まえながら、審査に強く、侵害に強く、事業に役立つ特許を、効率的かつ確実に獲得するためのコツに迫ります。
第1部 基本編
- 特許とは
- 特許権とは何でしょうか。なぜ特許権が必要なのでしょうか。特許権の基本的な目的と働きをおさえます。
- 特許権をどのように使うと、他社との競争を有利に進めることができるのでしょうか。特許権を用いた戦い方の典型的なパターンを幾つかご紹介します。
- 発明という無形のアイディアから、特許権という戦力を形成するまでのプロセスをおさえます。
- 特許の役割
- 事業における特許の使い方
- 特許が成立するまで
- 明細書とは
- 特許権を得るために、なぜ明細書を書く必要があるのでしょうか。また、何をどのように書くべきなのでしょうか。特許法の導入部分を紐解きながら、明細書の役割と、求められる要件の本質に迫ります。
- 明細書の役割
- 明細書の構成 – 明細書を見てみよう
- 明細書に求められる要件
- 何をどのように書くか
- 明細書には、必ず書いておきたいことと、書く必要の無いこととがあります。書く内容を誤ると、審査に通らなかったり、審査を通っても不十分な権利になってしまいます。確実に、かつまともに使える特許権を取るためには、「何を」「どのように」書けば良いのでしょうか。原則となる考え方とともに、典型的な文例や構成例をご説明します。
- 何を書くか
- 発明の本質的な特徴を把握する
- 発明の本質的な特徴
- 発明にならないもの
- 「新規性及び進歩性」について
- 発明の外縁を広げる
- どのように書くか
- クレームを書く
- クレームの記載パターン
- 構成要素の数と抽象度とが技術的範囲を決める
- 技術的範囲と新規性及び進歩性との関係
- 「明確性」について
- 明細書を書く
- 明細書の記載パターン
- 従来技術を説明する
- 課題、効果を設定する
- 実施例を説明する
- 分野別の記載パターン
- 図面を用いる
- わかりやすい文章を書く
- 何をどこまで詳しく書くか
- 「実施可能性」について
- 図面をかく
- 図面の記載パターン
第2部 応用編
- 審査に通りやすい明細書とは
- 審査を通らなければ、特許は得られません。審査官の厳しい指摘に耐えられる明細書とはどのようなものでしょうか。審査における強さという観点から、「何を」「どのように」書けば良いか考えます。
- 様々な引用文献をあらかじめ想定する
- あいまいさを排除する
- 「サポート要件」について
- 権利行使に強い明細書とは
- 競合を排除するための十分な能力がなければ、本当に使える特許とは言えません。競合他社に対する攻撃力、又は防御力の強い明細書とはどのようなものでしょうか。権利行使における強さという観点から、「何を」「どのように」書けば良いか考えます。
- 事業の上流から下流までをカバーする
- 技術の進歩をあらかじめ想定する
- クレームの書きかたで技術的範囲を自在にコントロールする
- 事業戦略を見据えた明細書とは
- 事業を取り巻く環境は刻々と変化します。事業戦略の変化にもある程度追従できる広汎性がなければ、本当に使える特許とは言えません。変化に対する強さという観点から、「何を」「どのように」書けば良いか考えます。
- 事業の将来の方向性をあらかじめ想定する
第3部 演習編
- 明細書の骨子を書いてみよう
- 明細書のあるべき姿が分かっていても、実際にそこにたどり着くのは意外と難しいものです。ここでは、皆様の頭のなかにあるアイディアを、明細書という形にコンバートする作業を、段階を踏みながら体験していただきます。このフレームワークを一度経験すれば、実務も効率良く進められるでしょう!
- アイディアを整理する
- ストーリーを組み立てる
- クレームを書いてみよう
- 特許出願において、特に注意を要するのがクレーム (特許請求の範囲) の作成です。ここでは、あるアイディアをどのようにクレームとして表現できるか検討します。
- クレームを書く
第4部 質疑
- 当日の講義内容はもとより、特許や知的財産全般に関する疑問点や不明点について質問をお受けします。