合成の後に精製を目的として「再結晶」や「再沈」操作が実施されますが、その操作の少しの違いによって、純度が悪くなったり、粒径分布の悪化によって固液分離が困難になったりします。実は、「再結晶」や「再沈」にもテクノロジーがあり、それがプロセスでいう「晶析操作」です。この結晶化現象を利用した晶析操作は、医薬・食品のみならず、電池材料など機能性材料開発の分野で幅広く利用されています。晶析は「粒子群製造」と「高純度品製造」が同時に実現できる操作です。結晶性物質を取り扱う分野とその機会は多くなってきており、結晶性物質の応用範囲も多様化してきています。しかし、結晶性物質を対象とする限り、核化・成長を取り扱う「晶析の原理」や、固相の「分析操作」そして「スケールアップ」などは、思い通りの精製を行ったり、結晶を創製したりするのに必要な技術基盤です。
そこでこの講演では、結晶粒子群を晶析操作によって思い通りに創り出すための工夫を、晶析のメカニズムの基礎や結晶化現象の解析方法、そして結晶品質の作り込み戦略の観点から易しく解説します。また、結晶多形制御や結晶形態改善などの実践的な話題や、新しいセンサーを用いた解析方法についても概説します。
- 「再沈」「再結晶」と晶析との接点
- 晶析操作で何ができるのか -
- 結晶化で遭遇する問題事例
- 有機合成と工業晶析操作との接点
- 晶析操作の目的と原理
- 工業晶析プロセスの特徴
- 「再結晶」によって結晶が創られるメカニズムを探る
- 結晶化現象をどう整理し理解するのか -
- 結晶が創られる場面での現象論
- 結晶化の推進力と固液平衡
- 核発生速度と成長速度論
- 結晶品質
- 演習で理解する晶析現象
- 今すぐ役立つ結晶粒子群を創るためのポイント
- 結晶品質に関わる具体的問題解決アプローチ -
- 結晶の粒径分布を思い通りにしたい場合
- 粒径分布はいかに決定されるか
- 粒径分布の数値的取り扱い
- 安定した結晶を思い通りに創りたい場合
- 結晶多形に及ぼす晶析操作因子とは
- 結晶多形制御の戦略
- 結晶の外形を思い通りに創りたい場合
- 結晶形態に及ぼす晶析操作因子とは
- 結晶形態制御の戦略
- 結晶の純度を思い通りに良くしたい場合
- オイルアウトの回避方法と晶析操作
- 演習で理解する結晶品質の制御
- 今すぐ役立つ結晶粒子群品質の測定法
- 思い通りに結晶を創るための測定機器の実践的使い方 -
- DSCデータから何を読み取るか
- DSC (示差走査熱量計) でわかること
- DSC測定データの解釈とその応用
- XRDデータから何を読み取るか
- XRD (粉末X線回折) 測定データの意味
- XRD測定データと結晶形態・結晶子径との関連性
- 思い通りに結晶を創るための晶析操作設計法
- 結晶品質の作り込み戦略を立てるためには -
- 晶析操作の基本戦略
- 晶析操作設計の留意点
- 冷却晶析や非 (貧) 溶媒添加法 -
- 反応を伴う晶析操作の戦略
- 晶析のスケールアップに関わる最近の技術
- 最新晶析技術紹介
- 最先端のラボで使われている技術を理解する -
- オンラインセンサー利用技術
- 光学分析利用技術
- まとめ