(2015年11月11日 10:30〜12:00)
デュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD) は筋ジストロフィーの中で最も発症頻度が高く、重篤な遺伝性疾患である。ステロイド剤などの進行を遅らせる薬剤に加え、根本治療を目指したエクソン・スキップ治療、遺伝子治療、幹細胞移植治療が検討されている。 筋ジストロフィーは筋病理学的に筋線維の変性、壊死を主病変とした進行性の筋萎縮、筋力低下を示す遺伝性筋疾患である。 中でもデュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD) はX染色体連鎖性遺伝形式を示し最も重症かつ発症頻度が高い。 原因遺伝子はXp21に局在するジストロフィン (DMD) 遺伝子であり、筋形質膜に局在するジストロフィンをコードしている。ジストロフィンは骨格筋ではアクチンとジストログリカン複合体に結合し、細胞膜の安定化に関与していると考えられている。また、心筋、平滑筋、神経組織などにも発現している。 DMDではジストロフィン遺伝子の変異 (欠失、重複、点変異等) によりアミノ酸の読み枠がずれるため、ジストロフィンの発現が欠損している。一方、ジストロフィン遺伝子に変異があるもののアミノ酸の読み枠が保たれる場合は、不完全ながらもジストロフィンが発現するために、軽症のベッカー型筋ジストロフィー (BMD) となる。 ジストロフィンの欠損により筋形質膜の安定化が損なわれ、細胞内カルシウム濃度の上昇により様々なプロテアーゼが活性化されることや、細胞膜に結合しているタンパク質の発現低下、機能低下が病態に関与していると考えられている。 副腎皮質ステロイド剤がDMDの筋機能改善や歩行期間の延長を示すことが指摘され、本邦では2013年に同薬剤が保険収載された。しかし、副作用の点から投与量、投与開始時期、投与期間についての課題が多い。また、その他に筋機能の改善薬が複数提案されており、一部では治験が行われている。 根治的治療法としては、ウイルスベクターまたは人工染色体を用いた遺伝子治療、幹細胞移植治療などが検討されているが、実現のためには克服すべき課題は多い。 一方、人工核酸であるアンチセンス・オリゴヌクレオチドを用いてアミノ酸の読み枠を修正し、ジストロフィンの発現回復を図るためのエクソン・スキップ治療の開発および治験が進められている。 本講演ではDMDの病態機序について述べた上で、薬物治療、臨床応用が期待されているエクソン・スキップ治療、リード・スルー治療、ウイルスベクター等を用いた遺伝子治療について概説したい。
(2015年11月11日 12:45〜14:15)
(2015年11月11日 14:30〜16:00)
創薬研究の新たなツールとして、ヒトiPS細胞を用いた治療薬の開発が期待されている。筋ジストロフィーに対する治療薬の開発をヒトiPS細胞を用いて実現させるにあたり、今後の創薬研究を目指す考え方を伝えたい。