接着強度を高くするだけでは耐久性や信頼性・品質を向上させることはできない。
接着部の破壊で最も多いのは接着界面での破壊であるが、界面破壊は最悪であり、接着界面での密着性を向上させて凝集破壊を達成させることが耐久性、信頼性・品質向上の基本である。また、接着強度はばらつきが大きな接合法であるため、平均値で考えてはならず、統計的扱いによって最低強度を求めることも重要である。さらに、破断強度を設計強度として用いることはできず、設計に用いることができる設計許容強度を知ることも必要である。
本講座では、接着の強度、耐久性、信頼性・品質に影響する多くの要因を説明し、諸要因の最適化法を示す。また、長期劣化の寿命推定の具体的手法、想定不良率・ばらつき・劣化・内部破壊・安全率・接着部に加わる力を考慮して必要な継手強度を簡易に求める接着設計法について説明する。
- 接着不良を未然に防ぎ信頼性の高い接着を行うための基礎知識
- 高信頼性接着の基本条件 – 開発段階で達成すべき目標値 -
- 「高信頼性接着」とは
- 開発段階で達成すべき目標値
- 接着部の破壊状態 – 凝集破壊率 -
- 接着強度のばらつき – 変動係数 -
- 接着のメカニズムと接着特性の向上策
- 接着の過程
- 分子間力、水素結合
- 表面張力 – 簡単な測定法と必要値 -
- 表面張力を高くする表面改質法と注意点
- プライマー、カップリング剤処理と注意点
- 表面粗面化の問題点
- 内部応力 (硬化収縮応力、熱収縮応力) の発生と低減策
- 結合強度を低下させる要因 (まとめ) – 接着の脆弱点 -
- 接着劣化のメカニズムと評価のポイント
- 劣化の要因とメカニズム
- 熱劣化
- 冷熱繰返し
- 水分劣化
- クリープ
- 耐久性評価の落とし穴
- 水分劣化における接着部の形状・寸法の影響
- 細長い接着部における接着部の幅と水分劣化の加速倍率
- 致命的損傷と非致命的損傷の見極め
- 応力と水分の複合による劣化の加速
- 耐久性の相対評価試験と絶対評価試験
- 耐久性の定量評価における評価条件の最適化
- ヒートサイクル試験の条件最適化
- 熱劣化試験の条件最適化
- 接着耐久性の長期寿命予測法
- 寿命予測の鉄則
- 長期熱劣化の予測法
- アレニウス法
- 長期水分劣化の予測法
- アレニウス法
- 吸水率分布からの予測法
- 長期屋外暴露劣化の予測法
- アレニウス法と乾燥回復性からの予測法
- クリープ耐久性の予測法
- 温度 – 時間換算による方法
- Larson – Miller法
- 疲労耐久性の予測法
- ばらつき、劣化、内部破壊を考慮して接着部の必要強度を簡易に求めるための原賀式 『Cv接着設計法』
- 原賀式 『Cv接着設計法』とは
- 不良率低減と品質向上の基本的考え方
- 許容不良率、工程能力指数、変動係数、信頼性指数、ばらつき係数の関係
- 高品質を満足する条件
- 接着部に加わる外力、平均接着強度とばらつき係数の関係
- 接着強度の変動係数はどのくらい必要か
- 内部破壊を考慮する
- 環境劣化による接着強度の低下とばらつきの増加
- 初期の必要平均接着強度を求める設計式
- 信頼性、耐久性、寿命、安全率のトラブル事例
①出荷品の性能、条件、②トラブルの状況、③当初の判断、④検証抜けの要因、⑤追加検証の結果、⑥原因の推定、⑦不良率の推定、⑧対策、⑨対策品の信頼性推定など
- ばらつきを考慮せず平均値で設計した
- 乾燥による強度回復性を考慮しないで接着剤を選定した
- クリープが加わっている状態に気がつかなかった
- 試験片と製品の接着部の形状・寸法の違いを考慮しなかった
- 疲労強度を間違った
- 引張り剪断試験で結果を見誤った など