粉体は様々な産業に利用されているが、粉体を含む材料でトラブルがあった場合には経験豊富な技術者がいないとなかなか解決しない。また、材料に粉体で新規機能を付与する場合も粉体分野での熟練度が必要とされる。これは粉体にはバルクの性質に加えて粉体の性質と表面の性質があるためで、それらの大まかな知識がないと現象を全体的に把握できないためだと思われる。
表面に関する性質には表面積や細孔分布、表面に吸着した分子の状態、表面電荷および親水性・疎水性といった濡れに関する性質などがあり、それらがお互いに影響を及ぼし合っている。特に触媒活性はさほど強い活性がなくても共存する他の成分に影響を与え、製品の品質を劣化させる場合がある。このような場合には表面処理を行うが、まず表面の触媒活性を消失させて、その後に分散性などの機能性を付与することが望ましい。粉体の表面処理というと古臭さを感じさせるが、精密なナノコーティングは「先端技術」の匂いの強いプロセスとなる。
本講では粉体表面の性質とその表面を不活性化した後に機能性を付与する「機能性ナノコーティング」についてその応用も含めて述べる。
- 粉体とは何か
- 粉体の粒子的性質
- 粒子の大きさ
- 粒子の形
- 粉体の表面の性質
- 表面積、細孔分布など
- 電荷、等電点など
- 表面官能基、濡れ、分散性など
- 粉体の触媒活性
- 粉体表面の酸、塩基点とその簡便な測定法
- 粉体の酸化、還元活性と熱測定を用いた粉体の油脂酸化測定法
- 光触媒
- 粉体の表面処理
- 固相による表面処理
- メカノケミカル反応、複合化など
- 液相による表面処理
- 還元法、ゾルゲル法、カップリング剤処理、ポリマー処理など
- 気相による表面処理
- プラズマ処理、物理蒸着法 (PVD) 、化学蒸着法 (CVD) など
- 機能性ナノコーティング
- あるがままの表面を利用した表面処理
- 粉体そのものの活性によるプロピレンオキシド、スチレンなどの表面重合
- 環状シロキサンによるナノコーティング
- ただシリコーンガスと接触させるだけの簡単な方法
- 細孔を塞ぐことなく1nm以下の均一コーティング
- ナノ薄膜の生成機構
- 共存する成分を分解させない粉体の不活性化が実現
- ナノコーティングされた粉体の焼成
- 酸化鉄、二酸化チタンの熱による結晶転移を抑制
- 複合酸化物が生成しルイス酸が発現
- ナノコーティング膜への機能性基の付与
- ヒドロシリル化反応でSi – H基を機能性基に変える
- アルキル基の付加と分散性
- アルコール性水酸基、イオン交換基、酵素などの付加
- 機能性ナノコーティングの応用
- 化粧品への応用
- 塗料への応用
- 高速液体クロマトグラフィーへの応用