本セミナーでは、微細化セルロース(MFC)の添加、電子線照射処理、炭素繊維の表面改質によるCFRPの耐衝撃性の向上について詳解いたします。
(2015年10月6日 10:30〜12:00)
リグニンおよびヘミセルロースを取り除いた化学パルプに強いせん断力を加えると、フィブリル化する (毛羽立つ) 。これを繰り返すと、差し渡し径が100~200nmほどの微細な繊維 (Cellulose Nano Fibers:CNF) が得られる。微細繊維が互いに絡み、蜘蛛巣状を呈することもある。これをエポキシ樹脂に均一分散させると、エポキシ樹脂の高じん化が図れる。破壊じん性値で測れば、2倍程度にも高められることがある。 このように、CNFにより物理的に変性されたエポキシ樹脂では、樹脂とカーボン繊維 (CF) との界面の見かけの接着性も高まる。この樹脂を用いて、CFを強化材とする複合材料 (CFRP) を成形すれば、層間剥離じん性値の顕著に増す。また、落球衝撃を受けた場合のCFRPの抵抗力も高められる。これらを背景に本セミナーでは以下について詳述する。
(2015年10月6日 12:45〜14:15)
炭素繊維強化高分子材料を、さらに強靭化する方法については、鉄筋コンクリートのように余荷重を与える方法はあるが、炭素繊維、高分子、界面接着の3項目の強度を同時に向上させる可能性があるのは、電子線照射処理である。当然、過剰な照射により、照射損傷は生じるが、微量照射でこれらの強度が増加する場合が多い。この結果、種々の組み合わせたCFRP試料で最適な照射量をお知らせすることが本講座の主旨である。
(2015年10月6日 14:30〜16:00)
炭素繊維は比強度および比剛性に優れ、繊維強化プラスチック (FRP:fiber reinforced plastics) 等の強化材として幅広く用いられており、このような複合材料は航空宇宙産業をはじめとして様々な産業分野で用いられてきている。炭素繊維は様々な前駆体から形成され、ポリアクリロニトリル (PAN) 系とピッチ系からなる炭素繊維が主要なものとして市販されている。個々の炭素繊維の物理的および力学的特性は前駆体や熱処理過程により変化に富んでいる。PAN系炭素繊維は一般的に高強度であり、ピッチ系炭素繊維は高剛性、高熱および電気伝導性である。このような炭素繊維の形状、構造および力学的特性に注目し、多くの研究がなされてきた。特に力学的特性に関しては1970年代より高強度/高剛性化が急速に進み、1990年代で強度 (6 GPa) /剛性 (900 GPa) に達している。このような高強度および高剛性炭素繊維ではより高度な要求 (高性能や多機能等) に応えられる材料開発が必要である。 本講演では、炭素繊維の改質方法として、ポリマーコーティングとCNT析出について紹介する。特に、炭素繊維として高強度PAN系および高剛性ピッチ系炭素繊維を用い、これらの改質を行った際の炭素繊維およびその複合材料の引張およびせん断特性に及ぼす影響について述べる。