米国におけるFDAにかかわる年間の回収数 (全品目) は9,000件前後にも上ります。そのうち医療機器に関しては、2014年度は1,283件の回収イベントで2,706品目が回収されています。医療機器の場合、回収の原因のうちその過半数が設計問題であるといわれています。またそのうち8割以上がソフトウェアの欠陥によるとされています。FDAは、医療機器の回収数を如何に減少させるかという課題に立ち向かっています。 医療機器企業においては、経営の健全化を図るためにCOPQ (Cost Of Poor Quality) を重要視しなければなりません。COPQとは、低品質や品質不良、欠陥、エラーのために生じる無駄なコストのことのことです。例えば、設計変更、製品検査、回収、患者への補償、訴訟費用、計画変更やサイクルタイムが延びることで起こる売上機会損失、ブランド価値低下などの潜在的なものまで含めた余計な手間やコストのことです。 通常、企業では日常的に売り上げの25%~30%の損失を発生させているといわれています。医療機器のライフサイクルにおいて、欠陥の発見がリリースに近いほど費用がかかります。医療機器のライフサイクルの後期に発見された欠陥は、開発者による作業のやり直しが必要になることが多く、必然的に医療機器のリリースが遅れます。この段階でエラーを修正するコストは、開発段階の100倍にもなる場合があります。医療機器が市場に出てからエラーを修正するコストは、1000倍にもなりかねないでしょう。 品質を改善することは、余分に多大な時間と費用がかかると思いがちです。品質活動に必要なコストは、活動人件費が大きいですが、実際には費用を上回る効果が実現できます。欠陥を減少させる事によりCOPQは大きく改善されるのです。 また演者がコンサルテーションを実施する中で、いつも驚くのは、医療機器企業におけるソフトウェア開発の未熟さです。多くの医療機器企業では、新製品の納期に追われ、十分な検証やテストを実施せずに出荷しているケースがみられます。また、ソフトウェア開発会社 (ソフトウェアベンダー) に比べて、ソフトウェア開発に携わる人数が極端に少ないのが現状です。さらにソフトウェア要員も適切な教育を受けていない場合が多く、不慣れ (未熟) なまま開発を行っている実態をよく目にします。いったいどうやって、納期を遅延させることなく、欠陥のないソフトウェアを開発すればいいのでしょうか。 FDAは、医療機器に含まれるすべてのソフトウェアの詳細なベリフィケーションとバリデーション (V&V) を実施するよう医療機器企業に要求しています。一般的にソフトウェアのテストは、通常プログラムを実行させて実施しますが、すべての条件分岐を検査することは不可能です。システムテストで見つける欠陥の60%以上が、コーディングエラーに起因しているといわれます。開発者がユーザの要件を単純に解釈してコーディングするためだと思われます。システムテストをより短期間で効率的に実施するためにどうやってコーディングエラーを減少させるかが問題です。 本セミナーでは、FDAが医療機器の回収数を減少させるための取り組みを解説します。また、医療機器企業が欠陥のない製品を設計開発し、COPQを削減するための品質改善方策を初心者にもわかりやすく解説いたします。