水素利用は温暖化対策の切り札として期待されているが、必ずしも楽観的な技術ではないことを誰もが気軽に取り扱えない現実が物語っている。
現状の水素製造・精製技術では、機器設計に高い技術レベルが要求されるとともに、運用に関しても柔軟性に欠ける面が少なからず存在する。そこで、これからの水素エネルギー社会の実現には、分散型電源である定置型燃料電池に向けた、シンプルなフレキシブルな水素精製・貯蔵システムの普及が必要不可欠と思われる。
本セミナーでは、水素を基礎物性から理解した上で、これまでの水素製造・精製技術を概説し、その現状・課題等について述べる。その上で、必要な電力に応じて水素を供給することができる、水素精製・貯蔵システムである COA-MIB法の開発について詳しく解説する。さらにエネルギー技術として実用展開するための課題提起、具体的な開発事例紹介とともに、将来への可能性に関して議論したい。
- 第1講
- 水素の利用と基礎物性
- 水素の工業的活用
- 水素分子の物性
- 単体水素の存在状態
- 金属-水素系の熱力学と反応速度
- 固体系水素貯蔵物質
- 液体系水素貯蔵物質
- 液体水素
- 第2講
- 水素エネルギーの意義
- 各水素製造技術の概要及び特徴と課題
- 水蒸気改質法
- 部分酸化法
- 水電解法
- その他水素製造技術
- 水素精製に関する従来技術の特徴と課題
- 主要な従来型水素精製方法
- 水素PSA法
- 膜分離法
- 深冷分離法
- 既存の水素精製方法のまとめ
- 次世代環境エネルギー技術開発拠点の構築
- 筑波大学CNES実験実証設備の概要
- CNES実験実証設備の外観・配置
- CNES Projectの目標
- 水素精製プロセス技術開発
- COA-MIB法の概要
- 水素吸蔵合金を用いた水素精製
- CO吸着剤によるCO除去
- COA-MIB法の運用方法
- COA-MIB法に関するプロセス開発
- プロセス試作実証 (ラボスケール~ベンチスケール)
- 水素精製に関する基礎検討
- 水素吸蔵合金容器の設置方法
- 不活性物質混合による水素回収率向上
- ラボスケール装置 ~水素回収率評価~
- 水素吸蔵合金容器に求められる性能
- 容器の耐久性・強度
- 水素精製・貯蔵用合金容器 A~E塔
- プロセスシミュレーションによる性能評価
- COA-MIBに適用する水素吸蔵合金材料技術開発
- 希少金属削減
- 高容量化
- 各種合金の高濃度CO2被毒耐性調査
- 水素吸蔵合金被毒対策
- 組成調整による被毒対策
- 表面処理による被毒対策
- AB5型水素吸蔵合金の組成変更
- AB5型水素吸蔵合金のCO2被毒耐性
- CaNi5の水素精製特性
- CaNi5の繰り返し水素精製特性
- COA-MIB技術の応用
- 純水素燃料電池の適用
- 純水素燃料電池の電極劣化
- 純水素燃料電池の負荷追従試験
- 純水素燃料電池の負荷追従能力
- 純水素燃料電池の電極損耗試験
- 純水素燃料電池の出力特性変化
- 燃料電池システムによる需給調整
- 燃料電池システムの需給調整機能検証
- つくば市DCモデルグリッドの概要
- つくば市DCモデルグリッド実証設備の運用結果
- COA-MIB応用によるSO-PEFC複合システム化
- SOFCのオフガス回収と燃料再生
- SO-PEFC複合システム概念
- SO-PEFC複合システムモデル
- SO-PEFC複合システム導入効果
- 水素社会導入実証への取り組み
- 水素活用都市プロジェクト案 (水素タウン研究会)
- 茨城県水素エネルギーシステムプロジェクト案め