自動車内装材・住宅・医療機器・食品包装材等には、従来塩化ビニル樹脂が用いられてきた。塩化ビニル樹脂は可塑剤を混ぜて軟質塩ビ (塩化ビニール) にして用いられることが多い。可塑剤にはアレルギー物質として懸念されているフタル酸エステル (Phtalate) が主に用いられてきたが、最近ではフタル酸エステル以外の可塑剤に代替えが進んでいる。更に塩化ビニル樹脂からウレタン系やポリオレフィン系等の熱可塑性エラストマー (TPE:Thermo Plastic Elastomers) に代りつつある。
住宅用 (建材) には可塑剤量の少ない硬質塩ビが用いられてきたが、ポリプロピレン (PP) 等のオレフィン系に代わりつつある。またフィルムにして用いられる場合は表層にはDMF等を含んだ溶剤系表面処理剤が塗工されてきたが、最近では水系が多く用いられている。乾燥方法も熱風から赤外線ヒーターに代わっている。さらに一部は紫外線,電子線架橋型の処理剤になり、装置の低エネルギー、コンパクト、クリーン化が容易になっている。またユーザーの個性は多様化して、プリント柄をロールで大量生産する時代は終わり、1個造りが可能なインクジェットプリンターや3Dプリンターにシフトしている。
本講座ではUSA、EU、中国等の最新情報をもとにトレンドを明確にして、熱可塑性エラストマーの応用と展開を解説する。
- 最近の動向
- K2013、interpack2014、CEATCH2014等の視察報告
- USA、EU、中国の現状
- 熱可塑性エラストマーの概要
- 従来タイプ
- オレフィン系 (TPV、p-TPV、r-TPO)
- スチレン系 (SBS、SEBS、SIS)
- ウレタン系 (TPU<エステル系、エーテル系、ポリカ-ボネート系>)
- ポリエステル系 (TPEE)
- 塩ビ系 他
- 新規熱可塑性エラストマー
- Dow Chemical (エンゲージ、バーシファイ、インフューズ等)
- 電気化学工業 (新規スチレン系熱可塑性エラストマー)
- 三井化学 (ノティオSN)
- アクリル系
- 従来材から熱可塑性エラストマーへの移行
- 軟質塩ビからの代替え
フタル酸エステル系可塑剤=内分泌撹乱物質の疑惑から毒性とアレルギー物質として懸念されている。
塩ビ=ダイオキシンの悪いイメージが定着してしまった事により軟質塩ビは非塩ビ化が進む。
自動車や住宅等の密閉空間では顕著。
- 脱溶剤化プロセスの時代へ
- ウレタン合皮の脱溶剤化への流れ:DMFフリー
- 表面処理剤の水性化動向:NMPフリー
- UV・EB硬化塗料
- 熱硬化性樹脂・ゴムからの代替え
ホルムアルデヒド等のVOC問題、リサイクル性、架橋反応による低生産性、臭い、大量の熱安定剤処方による
白化現象等の問題を解消。
- 省スペース・省エネプロセス
オープンプロセス (カレンダー成形、コーティング成形、パウダースラッシュ成形) からクローズドプロセス (射出成
形、押出成形) /オーブン (乾燥炉) レスプロセスへ。
- 各分野への熱可塑性エラストマーの適用
- 自動車分野
- 内装
世界の自動車内装材メーカーをマッピング化して、その特徴を詳細に解説。
熱可塑性エラストマー射出成形インパネ、布施真空TOM等の新しい成形工法、ウレタン系やスチレン系エラス
トマーのパウダースラッシュ成形、多孔質合成皮革等の新技術紹介。
- IP (インストルメントパネル) 、ドアトリム
- 配合 (TPOの選定/ドアアッパー、コンソールボックス蓋は耐油性が要求される)
- 押出し成形 (押出機、Tダイの選定/リサイクル向上が利益を出すためのポイント)
- コロナ処理 (コロナ処理機の選定)
- 表面処理 (表面処理剤と処理機の選定/水性化)
- 絞押 (ツートーン表現方法)
- 成形 (TOM工法等の真空成形、低圧射出圧縮成形、パウダースラッシュ)
- 物性 (耐光、耐熱、低エミッション)
- シートカバー (座席)
- 配合 (耐摩耗配合、難燃処方)
- 耐摩耗性 (架橋タイプ表面処理剤で補完)
- 防汚性 (白系のシートの増加)
- 外装 (グラスランチャンネルのTPV化 他)
- 住宅 (化粧シート、床材、異形押出 他)
- 医療
最近の開発技術と今後の展開
- SCF (超臨界流体) の応用
- 熱可塑性エラストマーへの電子線照射技術
2016年の展望