最近、EU-GMPおよびPIC/Sの改定最新版が相次いで発出されている。薬理活性が高い物質を扱う多目的設備では、交叉汚染防止という視点から、洗浄と同様に、封じ込め技術が品質確保のために重要な位置づけとなってきている。この場合、品質に与えるリスク管理の観点から、封じ込めプロジェクトに特有の各種リスクアセスメントを確実に実施し、科学的な根拠を持って対応していくことが求められている。いわば、封じ込めバリデーションの実践が求められている。
ここでは、最新の改訂の背景、規制の概要、健康ベースの曝露限界値の概要、封じ込めプロジェクトの基本設計、詳細設計、運用開始前、運用開始後におけるリスクアセスメント (RA) およびその結果として必要な対応などを、例題演習を交えて説明する。なお、一次封じ込め設計手順、封じ込め機器の詳細、二次封じ込め設計などの設備エンジニアリング的な事項は触れない。
- 医薬品製造工場を取り巻く動向とその背景
- 医薬品ニーズの変化
- 医薬品製造業界を巡る規制の沿革とその背景
- 高薬理活性物質を扱うマルチパーパス設備の課題
- 品質を確保するための洗浄と労働安全衛生のための封じ込め
- GMPと労働安全衛生 (IH) のバランス
- 合理的な説明を可能とするための封じ込めバリデーションと洗浄バリデーション
- 最新規制の概要
- EU-GMP 専用化要件 (Chapter 3 ) /交叉汚染防止要件 (Chapter 5 )
- EU-GMP Annex15 (洗浄バリデーション)
- EMAガイドライン PDE設定
- PICS GMP Annex15 Qualification and Validation
- 健康ベースでの曝露限界値 概要
- 健康ベース曝露限界値の定義
- 健康ベース曝露限界値の使われ方
- 健康ベース曝露限界値の計算式
- 健康ベース曝露限界値に関する留意事項
< 例題演習:健康ベースでの曝露限界値の算出 >
- 封じ込めプロジェクトの準備段階
- 社内ハザード区分表の準備
- 封じ込めコントロール選定表の整備
- プロジェクト基本計画・基本設計でのRA
- 対象物質のハザードアセスメント
- 現場の工程作業分析と曝露リスクアセスメント
- 目標封じ込めレベルの設定
- プロジェクト詳細設計でのRA
- 封じ込め機器使い勝手のアセスメント (モックアップ試験)
- 封じ込め機器と空調に関するアセスメント
- プロジェクト運用開始前のRA
- 封じ込め機器~洗いにくい箇所のアセスメント
- 封じ込めしにくい箇所のアセスメント
- 封じ込め機器まわりの曝露リスクアセスメント
- 薬塵測定による現場環境のアセスメント
- プロジェクト運用開始後のContinued Process Verification
- 現場の粉じん濃度のモニタリング
- オペレータの健康サーベイランス
- 設備外のモニタリング
- 非常時および異常時のRA