本セミナーでは、認知症の最新の発症メカニズムと治療薬開発について詳解いたします。
(2015年6月25日 13:00〜14:30)
アルツハイマー病は、認知症の約7割を占め、アミロイドβタンパク質 (Aβ) の脳内での蓄積で発症すると考えられている。Aβは、アミロイド前駆体タンパク質がβセクレターゼとγセクレターゼによる二種類の切断によって生じる40アミノ酸ほどのペプチドである。アルツハイマー病の発症を阻止するために、これらのプロテアーゼ阻害薬が開発されてきたが、これらの酵素は生体内で重要な分子切断を担うため、単なる活性阻害では副作用の恐れがある。この講演では、副作用の少ない抗Aβアプローチとしてどのようなものが期待できるか紹介したい。
(2015年6月25日 14:40〜16:40)
アルツハイマー病の原因はAβの凝集・沈着であるというアミロイド仮説に基づき、これまで多くのAβ標的薬が開発され、モデルマウスでその有効性が示されてきた。しかし、実際の患者を対象とした臨床試験では、いずれも患者の認知機能は改善せず、その多くが開発中止となっている。度重なる失敗を受けて、アミロイド仮説に対する疑念が広まった。そしていま、アルツハイマー病の治療薬開発は大きく2つの方向に進んでいる。1つは、「Aβからタウへ」の動きであり、もう1つは「治療から予防へ」という流れである。本講座では、タウのモデルマウスと免疫療法に関する筆者らの最近の研究を紹介する。