「データ完全性」 (Data Integrity) 不適合との指摘がPIC/S、FDAの双方において近年目立ち始めている (2013~2014年 PIC/S:6件 FDA:18件) 。またMHRA (英国医薬品庁) は2015年1月に「データインテグリティの定義とガイダンス」を発出した。GAMPヨーロッパは、業界に対しこのMHRAガイダンスのインパクトをアンケート調査した。
我が国のGMPにおいては、PIC/S加盟にともないバリデーション基準が全面改正され、DQの要件化や電子記録変更時の理由記録などが求められるようになった。一方、PIC/S はソフトウェアカテゴリ3機器に対してDQを求めており、適正管理ガイドラインベースのCSV方法を強化する必要がある。さらにPIC/Sは、生データとする電子記録や監査証跡対象の電子記録を規定し、監査証跡を規則的にレビューするよう求めている。そのためERES指針ベースのERES対応も強化する必要がある。
また、付録CDに収載する豊富な解説文書により、日欧米3極のコンピュータ要件について後日の自習が可能である。
ERES:Electronic Records, Electronic Signatures (電子記録、電子署名)
CSV:Computerized System Validation (コンピュータ化システムバリデーション)
ERES/CSV対応を体系的に説明するなかで、実例を示しながら以下のような点を具体的に説明する。
- ラボ機器・電子記録の真正性確保
- 紙生データ機器からの電子記録取り出しとデータ加工
- HPLCの紙生データに対するFDA指摘
- 監査証跡・定期レビューのPIC/S要件とFDA指摘
- 既存機器/システムのバリデーション
- HPLCのカテゴリ分類 (HPLCメーカによりカテゴリ分類が異なる)
- カテゴリ3/4の分類基準とグレーゾーンのバリデーション方法
- DQおよびシステムアセスメントの位置づけ
- スプレッドシートのバリデーション方法
- 電子記録・電子署名の基礎
- 真正性、見読性、保存性、監査証跡
- オープンシステム、デジタル署名
- 生データの電子化対応
- 生データと監査証跡対象の規定
- バックアップとアーカイブ
- HPLCの生データとFDAウォーニングレター
- CSVの基礎
- DQとリスクアセスメント
- トレーサビリティマトリクス
- GAMP 5のポイント
- カテゴリ混在時のバリデーション
- 基盤ソフトウエアのバリデーション
- コンピュータ化システム適正管理ガイドライン
- コンピュータ査察の基本方針
- 既設システムのバリデーション
- 機器/装置のバリデーション
- 開発計画書
- FDA Part 11 規則とガイダンス
- FDAのコンピュータ指摘107件の紹介
例:
- スプレッドシート (エクセル) をバリデートしていない
- サンプル数をエクセルで管理しているがその真正性を証明できない
- クロマトグラム生データを削除できてしまう
- 監査証跡をチェックした記録がない
- HPLCの電子生データが残されていない
- 運用開始以降、パスワードが変更されていない
- 共有ID/パスワードによる運用となっている
- PIC/SとFDAのデータインテグリティ不適合指摘
例:
- 良い結果が出るまで試し分析を繰り返している
- 試し分析結果のクロマト生データを削除している
- 試し分析を機器使用台帳に記録していない
- メソッドをだれでも変更できてしまう
- 電子記録の変更を監査証跡により監視していない
- PIC/Sのコンピュータ要件
例:
- 監査証跡の規則的レビュー (Annex 11)
- 生データとする電子記録を規定 (PIC/S GMP)
- 監査証跡対象の記録を規定 (査察官向けガイダンス)
- カテゴリ3に対するDQ (Annex 11)
- 待避データの見読性維持 (Annex 11)
- エクセル・スプレッドシートの管理 (EMA Q&A)
- FDA指摘への対応事例
- 監査証跡のレビュー
- HPLCの電子記録維持
- エクセル・スプレッドシート など
■質疑応答■
CSV/ERESに関し、日常の業務において困っていることや疑問などにお答えする。
事前質問大歓迎です。
名刺交換可