第1部. 脱細胞化組織による臓器再生
(2015年4月21日 10:30〜12:00)
再生医学の研究の発展は目覚ましく,特に,近年では,脱細胞化組織モデルが特に注目を集めている.
本講演では,その中でも特に子宮と軟骨の再生を中心に著者らの最新の知見を報告する.
- 人工臓器と再生医療
- 再生医療のアプローチ
- 3次元構造をデザイン
- 軟骨の構造と機能
- 再生軟骨のアプローチ
- 再生軟骨の問題点
- 再生軟骨の脱細胞化
- 子宮の構造と機能
- 再生子宮のアプローチ
- 再生子宮の問題点
- 再生子宮の脱細胞化
- 将来展望
第2部. 脱細胞化組織の今後の展望
(2015年4月21日 12:45〜14:15)
脱細胞化生体組織は,皮膚,小腸,血管および心臓弁などが欧米ですでに臨床応用されているが,我が国ではこれからの医療デバイスである.
本講演では,脱細胞化生体組織の現況と,近い将来の応用のための機能化と再生医療の主流となる可能性のある臓器再生についての講演者の展望を紹介する.
- 脱細胞化生体組織の現況
- 臨床応用段階と研究段階の製品と技術
- 応用段階:皮膚,骨,小腸,心臓弁,血管,etc.
- 研究段階:心臓,肝臓,腎臓,肺,脳,etc.
- 脱細胞化法について
- 物理的方法と化学的方法
- 脱細胞化処理法の影響の着眼点
- 脱細胞化生体組織の将来的な応用
- 臓器再生マトリクスとして
- 脱細胞化法による臓器構造への影響
- 細胞播種における問題点
- 新規医用材料として
- 素材としての特性評価
- 生物学的評価
- 材料学的評価
- 加工法の検討
- 薄膜化,粉末化,孔開け加工など
- 人工材料との複合化
- 皮膚組織内でのPMMAの傾斜的ラジカル重合
- 脱細胞化血管内膜チューブへの エレクトロスピニングによるファイバー複合化
- まとめ
第3部. 脱細胞化組織を利用した子宮の再構築
(2015年4月21日 14:30〜16:00)
子宮性不妊の治療は困難である.子宮の再生医療の研究にあたり,我々は,組織の脱細胞化に着目した.
ラット子宮を摘出し界面活性剤を灌流したところ,細胞外マトリックスを維持したまま細胞が除去され,子宮の脱細胞化マトリックス (Decellularized Uterne Matrix;DUM) が完成した.
ラット子宮細胞をDUMに注入し培養した結果,子宮内膜の再構築が認められた.
更に,ラット子宮角の一部を切除し,DUMを欠損部に移植する事で,子宮組織再生が認められた.
- 子宮の構造不全として,先天性子宮欠損に加え,子宮全摘あるいは部分摘出による後天的な子宮欠損が挙げられ,その妊孕性を正常化させる事は困難である.
- 本邦では倫理的な問題から代理懐胎は認められていない.
- 今年,ヒトでの子宮移植で初の分娩例が報告された (Brannstrom M, et al., Lancet, 2014) が,子宮移植に代わる新たな医療として,子宮の再生医療の研究は極めて重要である.
- 我々は,現在心臓等の臓器で報告されている,組織の脱細胞化マトリックスの作成と,それを用いた組織再生に着目した.
- ラット子宮を大血管付きで摘出し界面活性剤を灌流したところ,細胞外マトリックスを維持したまま細胞が除去され,子宮の脱細胞化マトリックス (Decellularized Uterne Matrix;DUM) が完成した.
- ラット子宮単離細胞をDUMに注入し培養した結果,子宮内膜の再構築が認められた.
- 更に,ラット子宮角の一部を切除し,DUMの一部を欠損部に移植する事で,子宮組織再生が認められ,その後自然妊娠が成立した.