第1部. iPS細胞を用いた神経系の再生・疾患・創薬研究
(2015年3月24日 10:00〜11:00)
iPS細胞技術は、皮膚などの体細胞に数個の遺伝子を導入するだけで多能性の幹細胞を誘導する技術で、2012年のノーベル医学・生理学賞の対象となった事は記憶に新しいかと思います。iPS細胞は、患者さん本人の細胞から作ることができるため、拒絶反応のない再生医療を実現できるという意味で大きな期待を集めています。私たちはiPS細胞から神経幹細胞を作ることに成功しました。そして、脊髄を損傷したマウスにこの細胞を移植することにより、それまで歩けなかったマウスが走り出しました。実際にヒトにこの技術を応用するためには移植の安全性などが問題となりますが、私達は考えられる安全性上の問題点を詰めるべく、日々検討を行っておりまして、今から4年後を目指して、脊髄損傷の患者さんへのiPS細胞由来の神経幹細胞を移植する臨床研究 (First Human Trial) を計画しております。当日は、神経再生研究の最先端や治療上の問題点についても解説します。また、iPS細胞技術は、再生医療に加えて、ヒトの病気のモデル細胞として、病態解明や創薬への応用が期待されております。私達自身のデータを紹介し、アルツハイマー病やパーキンソン病の治療の可能性についてもお話したいと思います
- iPS細胞を含む初期化技術とその原意
- 正常発生過程
- 体性幹細胞
- ES細胞
- ヒトES細胞の問題点
- 体細胞の初期化技術
- クローン技術
- iPS細胞技術
- iPS細胞を用いた脊髄損傷の再生医療
- iPS細胞の神経分化
- マウスiPS細胞由来神経前駆細胞を用いたマウス脊髄損傷治療
- ヒトiPS細胞由来神経前駆細胞を用いたマウス脊髄損傷治療
- ヒトiPS細胞由来神経前駆細胞を用いたサル脊髄損傷治療
- 機能回復のメカニズム
- 臨床応用に向けて
- iPS細胞技術を用いた神経系の病態解析と創薬研究
- 疾患iPS細胞を用いた病態解析 (概念図)
- アルツハイマー病の発症メカニズムとアミロイド仮説
- 家族性アルツハイマー病患者からのiPS細胞の樹立と病態解析
- iPS細胞技術を用いたアルツハイマー病の先制医療
第2部. 末梢神経再建のための人工神経 -iPS細胞・FGF-DDS付加による神経再生の促進
(2015年3月24日 11:15〜12:45)
末梢神経用の神経再生誘導管 (以下人工神経) の臨床応用が本邦でもようやく開始された。人工神経の素材は多岐にわたるが、理想的な人工神経の素材について解説し、また次世代の ハイブリッド型人工神経についても言及する。
- 末梢神経の再生機序について
- 末梢神経の構造
- 末梢神経損傷後の修復機序
- 臨床の場での末梢神経再建方法とその成績
- 欧米で臨床使用されている神経再生誘導管 (人工神経) について
- 人工神経の種類とその素材
- その臨床成績
- 比較試験
- 本邦で臨床使用可能な人工神経について
- 素材および特長
- 臨床成績
- 理想的な人工神経とは?
- 6つの条件
- 現在開発中の人工神経
- 次世代のハイブリッド型人工神経について
- ハイブリッド型人工神経とは?
- bFGF-Drug delivery system
- bFGF付加人工神経
- シュワン細胞ハイブリッド型人工神経
- iPS細胞ハイブリッド型人工神経
- 今後の展望
第3部. 認知症へ向けた再生医療の現状と安全性・有効性評価
(2015年3月24日 13:30〜15:00)
現在数種類の認知症治療薬が承認販売されているが、それらはすべて対症療法薬であり、疾患の本質に対する治療薬/予防薬ではない。本講演では、臨床医と基礎研究者の両方向の 視点から、認知症治療薬の問題点とその根治薬/予防薬開発に向けた方向性を示す。
- 臨床医の視点からの認知症患者の病態
- 認知症患者数の推移
- 認知症患者の病態
- 過去の治験の失敗例
- 治験の失敗より学ぶべきこと
- 基礎研究者の視点からの認知症薬開発の問題点
- 認知症モデル動物の問題点
- 認知症治療ターゲット設定の問題点
- 認知症モデル動物と認知症患者病態の乖離
- ターゲット設定の誤りと治験の失敗
- 臨床医/基礎研究者の視点からの認知症薬開発の今後の方向性
- 認知症患者の今後の治療ターゲット
- 認知症モデル動物に期待されること
- 認知症治療薬開発に対する我々の取り組み
- 認知症治療薬開発の今後の展望