ゴム材料は、文房具、家庭用品から産業資材まで、幅広い分野で利用されている有機高分子複合材料である。しかし、有機材料であえるがゆえ、その寿命は、一般に金属に比較して短い。材料の寿命は、劣化速度と密接な関係があることから、ゴム材料の劣化を理解し、劣化速度を低減できる工夫を行うことにより、材料の寿命を延ばすことが可能と考えられる。
一般のゴム材料は、加工工程における物理的、化学的作用を利用して得られる複合材料であり、その構造は複雑である。したがって、構造を理解し、その制御を行うことにより、材料の力学的高性能化、長寿命化が可能になると考えられる。
本講座では、これらをふまえて、ゴム材料の劣化と構造の関係について実例を取り上げながら、概説する。
- ゴム材料の構造
- ゴムゲルとフィラーゲル
- 架橋形態とゴムゲルの関係
- フィラー種とフィラーゲルの関係
- 熱可塑性ゴムの構造
- ゴム材料の疲労と劣化
- 疲労と劣化とは
- 疲労と劣化の評価
- 劣化の原因―熱劣化
- 劣化の原因―酸化劣化
- 劣化の原因―紫外線劣化
- 劣化の原因―オゾン劣化
- 劣化の原因―その他
- 劣化と老化防止剤
- 劣化速度
- 力学的高性能化への構造制御
- 構造制御の考え方―製造時の性能
- 構造制御の考え方―性能の時間変化
- 構造の安定性―熱的要因
- 構造の安定性―力学的要因
- 構造の安定性―環境要因
- まとめ
- 現状における問題点
- 未来に向けて
ゴム・プラスチック材料の破損、破壊に係わる因子と破壊モードなど破壊の基礎を解説する。また、材料の破損、破壊の解析法と破損、破壊に導く大きな因子である劣化の分析法について解説する。同時に破面観察から得られた情報を基にその原因を解析する手法を事例を交えて紹介する。
- 破壊の種類とそのメカニズム
- 強度に係わる因子
- 応力集中と破壊
- 破壊の形態
- 脆性破壊
- 延性破壊
- 疲労破壊
- 環境応力亀裂、溶剤亀裂
- オゾンクラック
- 接着の破壊
- 破壊・破損の解析法
- 解析アプローチ
- 外観観察 形状
- 破面解析法
- 前処理法
- 劣化分析法
- FT-IR
- DSCによる酸化開始温度
- GPC
- TG
- ESR
- NMR
- XPS
- EPMA
- 材料分析法
- 元素分析
- 分離分析
- 化学構造解析
- 形態観察
- 組成分析
- 熱分析
- 各種ポリマーの弱点
- 破壊・破損解析及び対策事例
- 加硫ゴムの破壊・破損
- 加硫ゴムのオゾン劣化
- 水道水中の残留塩素による劣化
- NBRの加硫不足による裂け
- プラスチックの破壊・破損
- 異物による破壊
- ポリアミド6の酸化チタンによる光劣化
- ポリカーボネートの溶剤亀裂
- ポリ塩化ビニルの疲労劣化
- コーナー部の形状不良による破壊
- ポリアセタールギアのオーバーヒーティングによる劣化破損 など
- 接着の破壊
- アクリル系接着剤の耐水性不足による破壊