米国を震源地とするシェール・ガス革命は、この3年間において世界のエネルギー情勢を大きく変貌させ、北米全体の天然ガス生産量、原油生産量は2014年も増加を続けている。米国におけるシェール・ガスをはじめとした非在来型天然ガスの生産増と、天然ガス価格の下落によって、米国、カナダにおいて相次いでLNG輸出プロジェクトが進められている。 米国における天然ガス価格は百万Btu (ブリティッシュ熱量単位) 当たり3ドル~4ドル台と低位安定し、米国エネルギー省は、既に4件ものLNGの輸出許可を出している。さらに、欧州諸国への天然ガス販売が減少するロシアも、サハリン3、ウラジオストックLNGをはじめとしてアジア大洋州へのLNG輸出計画を進めている。こうした米国、カナダ、ロシア、豪州をはじめとした数多くのLNG輸出プロジェクトによって、世界はLNGバブルの活況を呈したものの、2014年秋となって、LNGプロジェクトを取り巻く環境は激変している。 2014年2月には百万Btu当たり20.5ドルという過去最高値となったLNGスポット価格は、2014年11月時点では10ドル程度まで暴落している。これは、①日本の2014年夏の気温が低く、LNGの在庫が積み上がっていること、②韓国の原子力発電所の稼働が順調のため、LNG輸入量が伸び悩んでいること、③欧州諸国が景気低迷と割安な米国産石炭の輸入により、LNG輸入量を減少させ、余剰なLNGがアジア大洋州市場に流入していること、④パプア・ニューギニアLNGが稼働し、豪州、インドネシアのLNGにも余剰感が強まっていること、⑤原油価格連動のLNG価格が、2014年7月以降の原油価格下落により低下していること、等の要因が挙げられる。現状においては、LNG市場は、従来の売り手市場から買い手市場へと変貌を遂げつつある。 これまで、LNGプロジェクトに参画してきた産油国、メジャー (国際石油資本) 、総合商社、プラント・メーカー、重電メーカーは、LNG価格の下落、人件費、資機材費用の高騰によるプロジェクトの投資額の増加、2017年以降における供給過剰の可能性等の不透明要因に直面し、シェブロン等は、LNGプロジェクトの一部先送りを行っている。日本企業はLNGプラント、LNG専用船の建設・運転・保守に関連する世界最先端の技術を持っており、今後のLNGプロジェクトに関連する日本企業にとっての今後のビジネス・チャンスとリスク、経済性について、シェール・ガスとLNG分野の第一人者が的確に詳説する。