“水素脆化”とは水素と応力により材料が脆くなる現象であり、近年、“遅れ破壊”・“水素脆化”に対する知見が強く求められています。
例えば、環境問題を背景に、輸送機器の軽量化のため材料の高強度化が求められていますが、材料を高強度化するほど“遅れ破壊感受性”が高まり、突然の破壊が危惧されます。
また、水素をエネルギーとする燃料電池システムは次世代エネルギーの主役として期待されていますが、燃料電池自動車のタンクや水素ステーションでは極めて過酷な水素環境で材料が使用される傾向にあり、安全性と信頼性の確立が急務といえます。
本セミナーでは、金属と水素の物理化学的相互作用の基礎を平易に解説し、金属材料中の水素分析方法の特徴・注意点を説明します。
また、各種金属材料の遅れ破壊・水素脆性に関する過去および最新の研究、国際的な動向を理解し、最後に抑制に向けた指針を提案します。
- 金属と水素の物理化学的性質の基礎事項
- 金属 (bcc,fcc,hcp) 中の水素の固溶
- 金属表面での水素の吸着、侵入過程
- 金属中の水素拡散
- 金属中の水素トラップサイト
- bcc:体心立方格子構造 …Li , Na , K , β-Ti , V , Cr , α-Fe , δ-Fe , β-Sn , Ta , W
- fcc:面心立方格子構造 …Al , Ca , γ-Fe , Ni , Cu , Rh , Pd , Ag , In , Ir , Pt , Au , Pb
- hcp:六方最密充填構造 …Be , Mg , α-Ti , Zn , Cd , Nd , Os ,Tl
- 水素分析方法の特徴・注意点
- 昇温脱離法
- 水素可視化方法
- 遅れ破壊メカニズム
- 水素脆性とは
- 水素脆性の特徴
- 内圧説
- 格子脆化説
- 局部変形助長説
- 空孔凝集説
- 金属中の水素存在状態と脆化メカニズム解明へ向けた最近の研究
- 昇温脱離法によるbcc,fcc,hcp金属の水素放出プロファイル比較
- bcc金属 (鉄鋼材料等) の水素存在状態と水素脆化
- fcc金属 (ステンレス鋼、アルミニウム等) の水素存在状態と水素脆化
- hcp金属 (チタン) の水素存在状態と水素脆化
- 水素脆化メカニズムに立脚した遅れ破壊抑制指針