「映画の著作物」と聞くと、劇場用映画のことだけを思い浮かべますが、著作権法で「映画の著作物」には、テレビ番組、テレビCM、果ては皆がスマホで撮影した動画も含んだ、いわゆる映像により表現されるすべての著作物が含まれます。よって、これを「映像コンテンツ」と呼び変えてもよいでしょう。
その「映画の著作物」に関し、著作権法は、法の原則とは異なる例外規定を多く設けており、その意味を正確に理解することが、たいへん難しくなっています。また、「映画の著作物」を二次利用するときに、禁止権をもっている権利者がどれだけ居るかということは、条文を読むだけではほとんど理解できません。本講では、法律で定められたすべての意味を正確に理解できるよう、丹念に解説します。
また、「映画の著作物」に関しては、判例、裁判例も多く出されており、具体的な紛争が生じたときに、法律で定めた規定だけでは分からないところの判断基準を示しています。本講では、過去すべての判例、裁判例を紹介し、その考え方が妥当なものと言えるかどうか、講師の見解も披露します。
さらに、官庁、一般企業あるいは放送局が、制作会社に「映像コンテンツ」の制作を発注する場合に、その著作権の帰属に関し、注文を付けてくることは多くあります。また、「映像コンテンツ」の二次利用にあたり、法律の定めとは異なる権利処理がされている場合もあります。本講では、このような「映画の著作物」に関して実務ではどのような交渉が行われ、あるいは権利処理の慣行があるかなどについても、講師の知る限りのことを伝えます。
法律の初心者の方にも興味深く聴いていただけるよう務めますし、中上級者の方には、「映画の著作物」に関してもっておられる知識を体系的に整理する形で再確認していただき、日々の実践に活かしてもらえるよう工夫を凝らします。
- 「映画の著作物」とは何か
- 「映画の著作物」に含まれるものと、そこから除外されるもの
- 「二次的著作物」となる「映画の著作物」と、そうならない「映画の著作物」
- 「映画製作者」が存在する「映画の著作物」と、
存在しない「映画の著作物」
- 「映画の著作物」の「著作者」とは誰のことを指すのか
- 「モダンオーサー」と「クラシカルオーサー」
~権利が剥奪される著作者と、権利が守られている著作者
- 「制作」と「製作」の違い
- 映画の著作物」の保護期間消滅とともに権利が消滅する著作者と
消滅しない著作者
- 裁判例の研究
- 「映画製作者」とは誰のことを指すのか
- 「著作権法における「定義」と、裁判例が明らかにした
「映画製作者」の意義
- テレビCMにおいて、「映画製作者」を「広告主」と認定した
知財高裁判決の分析と評価
- 「専ら放送事業者が放送のために製作する映画の著作物」において、
映画製作者である放送事業者が取得する権利
- 「丸投げ発注」による製作委託と、「部分発注」による
「制作協力委託」との違い
「映画製作者」となるのは委託者か、それとも受託者か
- 放送局の制作会社への番組の制作委託の問題点
~公正取引委員会が制定した「役務の委託取引における
優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針
- 未完成の「映画の著作物」あるいは未編集映像素材の権利の帰属主体
- ~著作者に権利が帰属するとした「三沢市勢映画」事件・
東京高裁判決の分析と評価
- 「映画の著作物」の「製作」段階と「利用」段階で必要となる権利処理
- 原作、脚本など原著作物、音楽など「映画の著作物」に
複製される著作物
- 監督、演出家、プロデューサー
- 「映像実演」における「ワンチャンス主義」における権利の消滅と、
その例外
- 「レコード実演」とレコード製作者の権利
- 実務で行われる権利処理の実際、法律上の権利に基づく
権利処理との違い
- 「映画の著作物」の保護期間
- 保護期間延長の法改正の歴史、権利が消滅したものは
復活させない法原則
- 新著作権法時代に製作された著作物に与えられる一律の保護期間
- 旧著作権法時代に製作された「独創性を有する」著作物と、
「独創性を欠く」それの各保護期間
- 旧著作権法時代に製作された、団体の著作名義による著作物の
保護期間 (1953年問題)
- 旧著作権法時代に製作された、個人の著作名義による著作物の
保護期間 (「死後38年」規定の適用)
- 質疑応答/名刺交換
【おまけ】 講師の豊富な実務経験から『裏技』・『小技』・『マル秘話』の数々を
惜しみなく披露