東日本大震災や過去の大規模災害での経験を踏まえ、総務省ではICTによる防災・減災に関する研究開発等の取組を推進している。被災地である東北地域において情報通信研究機構 (NICT) による産学官連携の研究開発拠点である「耐災害ICT研究センター」を設立した。また、総務省の委託研究により、通信混雑 (輻輳) を緩和する技術や、自律的に通信機能を復旧する技術等についての開発を推進するとともに、それら研究開発成果の早期普及を目指し、研究開発受託者、NICTや総務省などにより構成される「耐災害ICT研究開発協議会」において自治体等が災害に強い情報通信ネットワークを構築する際に参考となるガイドラインを策定するなど、幅広い活動を展開している。大規模災害時における通信の確保は、来年3月に開催される第3回国連世界防災においてもクローズアップされるなど、我が国だけでなく世界各国において喫緊の課題となっている。本講演では、これらの動向について、総務省の取組を中心に紹介する。
東日本大震災から三年余りが経過し、震災後、速やかに着手した既存の技術を用いた災害対策は概ね完了し、成果を上げている。モバイルネットワークでも、無線基地局や基幹システムの災害対策の強化 (大ゾーン基地局の設置など) や災害時に役立つサービスの提供 (災害用音声お届けサービスなど) が行われるなど、耐災害性の向上が達成されている。震災後には、既存技術の範疇を超えた耐災害性の強化に向け、耐災害ICT研究 (総務省) などの産官学連携研究開発や通信事業者などでの独自の取組が開始されており、現在、これらの研究開発成果が具現化しつつある状況となっている。本講演では、そうした現状を踏まえ、震災後に開始されたモバイルネットワーク関連の耐災害性強化に向けた研究開発の事例やそれらの研究開発成果の今後の展望を背景となる東日本大震災時の被害状況の振り返りなどを交えて紹介する。