第1部 難利用組成であるリグニンの基礎と産業利用の課題・展望
(2014年9月18日 10:30〜12:00)
京都大学 大学院エネルギー科学研究科 エネルギー社会・環境科学専攻 教授 Ph.D. 米国博士
坂 志朗 氏
リグニン化学の研究はこれまで基礎的な側面での課題に重さが置かれ、応用研究についてはパルプ製造での脱リグニンに関する研究以外、充分な研究がなされてこなかった。
しかしながら、エネルギー・環境問題が喫緊の課題となってきた近年、リグノセルロースからのバイオリファイナリーの研究が注目されている。
そこで本講演では、リグニンの系統学的進化の基礎科学を踏まえ、その分布と構造などのトポ化学について 紹介し、リグニンの利用に関する現状と課題、さらには展望について紹介する。
- リグノセルロースのトポ化学
- 種々バイオマスの分類学的特性
- 高等植物の組織解剖学
- 木材細胞壁の微細構造と化学組成
- 種々バイオマス化学組成の定量分析法
- リグノセルロースのリグニン構成単位、結合様式及びトポ化学的分布
- リグノセルロースの水熱反応
- 水熱反応によるリグニン分解
- リグニンのエーテル結合と縮合型結合
- 残存リグニンのトポ化学
- リグニン産業の現状、課題及び展望
- リグニン利用の現状
- リグニン利用への課題と今後の展望
- 総括
第2部 リグニンを利用した生分解性プラスチックの開発とバイオリファイナリーへの展開
(2014年9月18日 13:00〜14:30)
(独) 理化学研究所 酵素研究チーム チームリーダー 博士 (工学)
沼田 圭司 氏
植物を構成する成分であるリグニンの分解物もしくはアルカリ処理したリグニンを微生物に与えることで、バイオプラスチックの一種であるポリヒドロキシアルカン酸を合成することに成功しました。
リグニンの分解物である芳香族化合物は、微生物へ毒性を示すことが多く、バイオリファイナリーへ利用することが難しいと考えられてきましたが、本成果を基に、リグニン分解物を含む廃液等の再利用へも応用が可能であり、幅広いバイオリファイナリー技術と融合することで、新たな産業構造の構築が期待されます。
- バイオプラスチック
- バイオプラスチックの微生物合成について
- バイオプラスチックの物性について
- バイオマス資源としてのリグニン
- リグニンに代表される芳香族バイオマス資源の重要性について
- リグニンを原料としたバイオリファイナリーの問題点
- リグニンを利用したバイオプラスチックの微生物合成は必要か
- リグニン派生物質を利用したバイオプラスチックの微生物合成
- スクリーニング系の確立
- バイオプラスチックの微生物合成の結果:収量、化学組成、分子量等
- 代謝経路とリグニン派生物の関係
- アルカリ処理したリグニンを直接利用したバイオプラスチック合成
- 微生物の選択
- バイオプラスチックの合成例
- 本研究グループにおける今後の研究指針
第3部 リグニンを利用したエポキシ樹脂の開発と特性
(2014年9月18日 14:45〜16:15)
横浜国立大学 安心・安全の科学研究教育センター 客員教授 博士 (工学)
高橋 昭雄 氏
木質バイオマスの20~30%を占めるリグニンをエポキシ樹脂に応用し、熱硬化性樹脂としての可能性を探る研究を進めている。
ポリフェノール構造であるリグニンおよびフェノール化されたリグノフェノールでエポキシ樹脂を硬化させた。その結果、フェノール硬化エポキシ樹脂と遜色ない硬化性を示し、耐熱性の目安であるガラス転移温度は190℃を超える高い値を示した。
さらに、フェノール樹脂と同様にエピクロルヒドリンによるエポキシ化も可能であることが確認されている。モデル反応による確認を交えて報告する。
- 杉由来リグニンを用いたバイオマスベースエポキシ樹脂
- リグノフェノールのエポキシ樹脂への応用と課題
- 杉由来爆砕リグニンのエポキシ樹脂硬化剤としての応用
- リグニン硬化エポキシ樹脂の硬化促進剤の検討と最適硬化条件の選定
- リグニン硬化エポキシ樹脂の特性
- 杉由来爆砕リグニンのエポキシ化の検討
- エポキシ化リグニンの硬化物の特性
- 麦わらリグニン由来エポキシ樹脂の開発
- エポキシ樹脂硬化剤としての検討と応用
- エピクロルヒドリンとの反応によるエポキシ化の検討
- モデルによるリグニンとエポキシ化リグニンの反応確認
- エポキシ化用相間移動触媒の検討
- 硬化促進剤の検討と最適硬化条件の選定
- フェノール硬化麦わらリグニンエポキシ樹脂の特性
- フェノリックリグニンとエポキシ化フェノリックリグニンの研究
- フェノリックリグニンの合成とモデル反応による確認
- フェノリックリグニン硬化エポキシ樹脂の研究
- エポキシ化フェノリックリグニンの合成と硬化物物性