スケールアップには「挙動のスケールアップ」と「品質のスケールアップ」がある。前者の解析は割合容易であるが、後者は難物である。
100有余年の混練操作の歴史で、なかなか正解が得られていない事象である。今の業界では、2軸押出機に代表されるせん断力応用機種がほほ100%用いられているが、せん断分散は分散過程に不均一性を内在している。
そのために品質のスケールアップが非常に難しくなっている。せん断応力、せん断歪に代表される、品質に関わる種々の物理量をもってしても、分散品質と1:1に対応しない。混練操作を通して、これらの物理量が平均値あるいは全体値としてしか解析できないためで、各部分でレベルの違う分散過程があり、これが全体に混ざり合う分散作用では、不均一挙動になるのが当然と思われる。
このような現象には緩和則を用いて、当たらずとも遠からず (すごく近い) スケールアップ則を実現する手法が用いられ、本講演では新しく提案する分散パラメーターを緩和則として使用し、品質予測ができる技術を紹介する。
実際の分散作用に関して、破砕分散、分配分散を含むスケールアップに関与するせん断作用をまず理解いただく。
最近話題に上がっている伸長流動分散作用に関しても理解いただく。後者は不均一性の少ない分散形態である。これらの混練形態において、スケールアップの手法を考察する。
一方、本講演ではスケールアップが必要でない分散操作をいくつか紹介する。これらの技術の応用として、最近出てきたナノ分散は、こうした不均一性の存在しない、スケールアップが容易な技術に裏打ちされなければなかなか実現できない。
- 曲げ剛性と衝撃強度を同時に向上させる混練
- 通常サイズの無機フィラーだけでは衝撃強度は向上しない。
- ナノコンポジットで達成できる。
- 粒子の凝集特性との関連
- なぜナノ分散によって曲げ剛性と衝撃強度が同時に向上するのか。
- 無機ナノで、Bound Polymer, Bound Rubber発生のメカニズムと補強理論
- EPR添加の場合の強度発生のメカニズムと補強理論
- 必ずしも (ナノ分散=強度向上) ではない。その理由。
- Sub-micron分散でも強度向上効果は得られる領域がある。
- せん断流動における破砕分散の特性
- McKelvyの2粒子分割理論
- 橋爪の回転粒子分割理論
- せん断流動における分配分散の特性
- 疑似乱流の分配効果
- Meltfracture分散効果
- 伸長流動分散の特性
- 伸長応力下の粒子破断理論
- Capillary No.の応用で、分散限界を表示できる。
- 2軸押出機と連続混練機
- 2軸押出機と連続混練機のせん断特性
- 2軸押出機に傾注する現在の混練分野の盲点
- せん断流動分散では、なぜ品質相似実験が出来ないのか
- スケールアップ
- 挙動の相似と品質の相似
- 高分子分散で分散品質に係わる相似則が応用できない理由
- 緩和則の理解と応用
- 有効混練時間の考え方
- 分散パラメーターとこれを緩和則へする応用技術
- 従来の分散パラメーターと新しい分散パラメーター
- 解析要因のα1、α2の解析の実際
- カーボンブラック分散での応用例
- 1、α2解析法を用いた2軸押出機の操作特性
- せん断品質平面の表示と品質等価曲線
- 各種材料に対する品質等価曲線の特性
- その法則から外れる材料特性 (たとえばCB)
- せん断流動分散の不均一性を補う緩和則の実際
- 混練の有効時間に寄与する要因
- T関数の解析と応用
- 真空混練技術
- 黄金分割理論
- 伸長流動分散では、ほぼ均一分散ができる
- Utracki理論と橋爪理論の違いと実証実験
- Capillary numberの応用
- せん断流動分散と伸長流動分散の適応領域
- 均一分散の実際
- Nylon中へのHDPE分散への応用
- 2種エラストマー分散への応用
- 分散における不均一性内在技術とほぼ内在しない技術
- 内在技術の代表:せん断分散技術
- ほぼ内在しない技術
- コンパウンド系:スラリー分散技術、プルトルージョン技術
- ポリマーブレンド系:伸長流動分散技術
- ナノ分散技術の応用
- 無期ナノ分散が得られる4方法とその評価
- In situ法
- 層間挿入法
- 高せん断法 (産業技術総合研究所)
- スラリー分散技術 (橋爪)
- 均一分散か否か
- 完全均一分散技術の例:長繊維ペレット成形技術の実際
- 全く新しい分散概念 (非せん断流動分散、非伸長流動分散)
- PPGの物性、 曲げ剛性と衝撃強度を同時達成
- アスペクト比の大きい繊維を残すFRTP応用技術
- 自動車部品への応用
- 世界1000億円市場への展開