2012年から顕在化した米国を震源地とするシェール・ガス革命によって、世界の石炭、天然ガスを取り巻く情勢は革命的に変貌している。 第1に米国のシェール・ガス革命によって米国産の石炭価格が下落し、コロンビア産の余剰の石炭がアジア大洋州市場に流れ込み、石炭の価格競争力が強まっていること。 第2に米国においては、天然ガス価格の低下により、天然ガス火力発電が、石炭火力発電と並ぶ割合まで上昇していること。 第3にアジア諸国における高度経済成長に伴って、年率10%近くの電力需要の伸びから、アジアにおける石炭火力発電、天然ガス火力発電新設の計画が大きく増加していること。 こうした3つの要因によって、原子力発電の世界的な見直し状況も加わって、発電用一般炭の需要が伸びている。 2012年のエネルギー別の伸び率は、石炭が2.5%、天然ガスが2.2%、石油が0.9%と、世界的には価格が割安な火力発電用のエネルギーの消費が増加している。 石炭は、①資源埋蔵量が、エネルギー換算で石油の2倍と豊富にあること、②石炭資源は石油のように一部の国に偏在することなく、主要な消費国に豊富に存在すること、③単位熱量当たりの価格が石油の5分の1程度と極めて安価なエネルギーであり、熱源としての利用においては、石炭が一番経済的な競争力を持っていること、④地球温暖化問題の交渉が難航していることから、排出権価格が暴落していること、等から資源エネルギーとしての石炭の評価が再び高まっている。 電力需要の伸びの著しいアジア諸国における最大のエネルギーは石炭である可能性が極めて強い。 同時に、アジア諸国は、ベトナム、タイ、インドネシアをはじめとして天然ガス資源が豊富に存在し、天然ガス火力発電の増強も進めている。21世紀半ばに向けてのアジアの旺盛な電力需要を支えるのは、石炭火力発電と天然ガス火力発電であることは確実である。 アジアにおいては、2035年までに800兆円を超える火力発電市場が誕生すると予測されている。 日本は超超臨界圧石炭火力発電をはじめとした世界最高効率の石炭火力発電技術、発電効率60%を超える天然ガス・コンバインド・サイクル火力発電技術、硫黄酸化物、窒素酸化物除去等の優れた、省エネルギー技術、環境技術を持っている。 価格の安さを武器とした中国企業、韓国企業との競争に直面する状況において、日本の重電メーカーと総合商社が一体となった、アジアにおける石炭火力発電、天然ガス火力発電に係わる巨大なビジネス・チャンスについて的確に解説する。