本セミナーでは、現状の水処理膜性能の超越、またさらなる用途拡大に向けた次世代の水処理膜材料技術について、
「高耐久性・高性能なDLC膜の開発」「RO/NF膜の適用・用途拡大に向けて、セラミックス・有機無機材料を用いたロバストRO/NF膜の開発」「膜ファウリング低減技術の、研究動向」「正浸透膜 (FO膜) 」「生体機能模倣膜」について解説いたします。
(2014年6月24日 10:30〜12:00)
(独) 物質・材料研究機構 先端的共通技術部門 高分子材料ユニット ユニット長 一ノ瀬 泉 氏
これまでの高分子系の水処理膜は、塩素やアルカリ、熱などにより劣化しやすく、細孔径を1ナノメートル前後に制御することが困難であった。 特に、耐有機溶媒性の水処理膜は、化学工業や資源開発における幅広い用途が期待されているが、分離性能や耐久性において問題が多かった。 一方、我々は、ダイヤモンド状カーボン (DLC) 膜を多孔化することで、水処理膜の熱・化学的な安定性を向上させ、不純物の除去速度を約3桁向上させることに成功した。本講演では、多孔性DLC膜とその将来展望について議論し、油ガス田開発で必要とされる分離システムを念頭に、様々な関連技術を概観したい。
(2014年6月24日 12:40〜14:10)
広島大学 工学研究院 化学工学専攻 教授 都留 稔了 氏
逆浸透/ナノろ過膜 (RO/NF膜) は,高度水処理技術として,浄水プロセスや産業排水の再利用に活用されている。今後のさらなる応用展開を図るためには,様々な原水に対応できるロバストRO/NF膜の開発が必要不可欠である。 ここでは,ロバスト膜として無機膜に注目する。セラミックおよび有機無機ハイブリッド材料を用いた,ナノ濾過膜および逆浸透膜の開発状況を紹介するとともに,それらのロバスト特性 (高温,塩素,pH) について紹介する。
(14:20~16:30 途中10分休憩含む)
神戸大学 工学研究科 先端膜工学センター 教授・センター長 松山 秀人 氏
多孔膜を用いた水処理は、世界的な水不足問題の解決に貢献する技術として近年特に注目を集めている。 ここではまず、水処理に用いられる多孔膜の製膜方法とその孔径の制御方法について解説する。また膜分離操作中に性能が低下する膜ファウリングは、現在膜工学における最も重大な問題である。 本セミナーでは、そのような膜ファウリングの低減方法について、世界の研究動向や講演者の研究室で得られた結果を紹介する。 さらに最近特に注目度の高い正浸透膜 (FO膜) や生体機能模倣膜について、世界の研究動向を交えて我々の研究結果を紹介する。