本セミナーでは、セルロースの基本的な性質、原料、細胞壁の構造などの基礎から解説し、セルロースナノファイバーの単離法、応用例について詳解いたします。
全ての植物細胞壁はセルロースから成るナノファイバーを骨格としています。植物原料からセルロースナノファイバーを単離する場合、セルロースの性質や植物細胞壁の構造について深く理解することが重要です。そのような基本的性質について、またこれまで行われてきたセルロースナノファイバーの単離法について簡単に説明した後、私達がこれまで進めてきたセルロースナノファイバーの単離方法について詳しく解説します。 また、種々の植物原料の違いに触れながら、単離したセルロースナノファイバーの性質や応用例について紹介します。
セルロースは地球上における最大のバイオマスであり、再生可能な産業資源としての有効利用が期待されています。セルロースを高効率で加水分解してグルコースを得ることができれば、バイオリファイナリーとして、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類やコハク酸等の有機酸を発酵法によって製造することができます。 また、バイオマス由来の複合材料 (グリーンコンポジット) の開発においても、ナノレベルで均一に微細化 (ナノファイバー化) されたセルロースが注目されています。しかし、天然バイオマス中のセルロースは強固な結晶構造を有するために加水分解やナノファイバー化が困難であり、現時点でその有効利用への技術開発は滞っている。 本講演ではセルロース前処理 (ナノファイバー化) のためにウォータージェット技術と、超耐熱性セルロース加水分解酵素を応用したバイオマスの有効利用技術について紹介します。
近年、セルロースナノファイバーは、生分解性であることに加えて力学的な強度が評価され、樹脂等への補強材としての研究・利用が進んでいる。セルロースナノファイバーの製法は物理的破砕や硫酸加水分解法が主なものであるが、我々はセルロースナノファイバーの生産方法としてセルラーゼ処理を用いた方法を考案した。 本講演では、各種セルロース試料について機械的処理とセルラーゼ処理を併せて処理した場合の形態変化について透過電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等での観察結果および結晶性などの特性について説明し、ナノファイバー生産の可能性を探る。