本講では,マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法 (MALDI-MS) を用いて、樹脂微粒子試料から直接定量する方法について具体例を交えて解説いたします。
また、測定結果から、高分子材料の劣化解析の手順について実例を挙げて詳解いたします。
一般に,樹脂材料中の各種添加剤の分析には,基質ポリマーから添加剤成分を溶媒抽出した後に,ガスクロマトグラフィー (GC) や液体クロマトグラフィーで測定する手法が主として用いられてきた。しかしながら,高分子量ヒンダードアミン系光安定剤 (HALS) などについては,目的成分の抽出分離が必ずしも定量的に行われないなどの問題があった。 本講では,高分子の化学構造解析に広く活用されている熱分解GCをベースにした反応熱脱着GCの手法,および固体試料調製法を組み合わせたマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法 (MALDI-MS) を用いて,ポリプロピレン (PP) 中に微量添加されている高分子量HALSを,樹脂微粒子試料から直接定量する方法について具体例を交えて解説する。さらに、熱分解GCなどの熱分解分析法によるこうした測定結果から、高分子材料の劣化に伴う化学構造変化を解析する手順についても実例を挙げながら述べる。