iPS細胞の研究で、京都大学の山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞されたことは、日本中で大きな話題となった。これらの研究は、再生医療だけでなく、医学全体にとって大きな進歩と言えよう。しかしながら、これらの技術を駆使しても、手や指、足などを再生できるまでには、まだまだ多くの時間が必要であり、幾つもの高いハードルを越えなければならないことも事実であり、義手や義足と言った装具や介護用機器などの必要性は変わることはないだろう。
現在、これらの用途に応用できる新材料やそれを用いた新技術などの研究開発競争が世界中で繰り広げられており、医療や介護、ヘルスケアーと言った分野だけでなく、様々な産業に新しい可能性をもたらしている。中でも、電界などで歪んだり、圧力を発生する誘電エラストマ (DE) は、SFの世界で繰り広げてきた話を実現させる技術として注目をあつめている。近い将来、事故等で障害を負った方々が、普通の人より、数段優れた活動が可能になったり、自動車等の乗物がDEで動く日がくると思われる。
DEを用いたアクチュエータは、電場によりもたらされるクーロン力を利用した技術で、人間の筋肉と似たような動きが可能である。更に主材がポリマーであることから、低コスト、軽量で、且つ、高エネルギー密度、優れた機械カップリング性等を有しているため、各種アクチュエータ、センサー、モーター、ポンプ、スマートマテリアル等に幅広く応用が可能である。また、DEは、既存のデバイスでは発電することが難しい、人間などの動きから発電することが可能なことから、医療やヘルスケアーなどの分野で多様されている携帯機器の電源としても使用することが可能になると思われる。
更には、風や波と言った自然エネルギーを用いても発電可能な事から、医療やヘルスケアー以外の幅広い分野への応用も大いに期待されている。
本セミナーでは、DEの基礎をはじめ、医療分野やヘルスケアー分野への応用例などをデモ機を交えて紹介する他、医療分野やヘルスケアー分野だけにとどまらず、ロボットから再生可能エネルギーと言った幅広い応用例を紹介する。更に、現在、各大学と進めているプロジェクトの最新情報なども可能な限り紹介する予定である。