電鋳技術は「めっきを利用して製品をつくる」製造技術である。電鋳の目的が電気めっきと異なるためその工程も基本的に異なる。 この電鋳技術は古くから利用されているが,電気めっき技術の進歩や母型 (マスターなどと呼ばれる) 材料および母型製作技術などの開発によってめざましく発展し,通常の機械加工では製造が困難な場合や高い精度で対象を細部まで複製することが必要な場合に広く利用されるようになった。
応用製品としては,金属工芸品から,精密部品,電子部品,航空宇宙機器部品への利用,さらには,先進の微細加工技術と電鋳技術の組み合せによるMEMSなどの開発が進められている。
ここでは,電鋳の特徴,応用製品,電鋳工程,電鋳浴および皮膜物性について検討した結果の一部を含め紹介する。
- はじめに
- 電鋳の特徴
- 電鋳とめっきの違い
- 電鋳の利点と欠点
- 電鋳製品とその製作工程
- 複製品の製作
- 金属メッシュの製作
- 金型の製作
- その他
- 電鋳浴 (めっき浴) の特徴
- ニッケルめっき浴の性質
(スルファミン酸ニッケル浴,ワット浴,酢酸ニッケル浴,ストライク浴)
- ほう酸および塩化ニッケルの役割 (基本的事項)
(塩化ニッケル濃度およびほう酸濃度とpH変化,陽極の溶解,緩衝作用など)
- ニッケル電鋳浴における予備電解 (弱電解処理) の影響
(ワット浴とスルファミン酸ニッケル浴の違い,電着応力の変化)
- ニッケル電鋳浴の選定
(製品に求められる皮膜物性と電解条件,適する電鋳浴)
- ニッケル電鋳浴から得られる皮膜の物性
- 電着応力,引張強さ,伸び,硬さ
- 皮膜中の硫黄含有量と電着応力
(予備電解処理および応力減少剤濃度と電着応力)
- 断面組織と皮膜物性の関係
- 硬さ,伸びおよび引張強さの関係
- ニッケル合金電鋳皮膜の特性
- ニッケル電鋳の不良原因について
- 銅電鋳における電流波形および添加剤の影響
- おわりに