本講座は,振動を習ったことがない,あるいは,振動は習ったが実際の振動現象をどのように捉えてよいか分からない,といった初学者を対象にしている. そのため,振動の基本となる一自由度振動系の自由振動,固有振動数,強制振動,共振について,まず説明する.続いて,多自由度振動系における固有振動モードについて解説する.これらの説明は,視覚的に現象を捉えられるように,動画を併用して行う. 以上の基礎知識を実際の設計・対策に応用・展開していくには,動的システムを十分に理解しておく必要がある.振動応答は,外力 (加振力) に大きく支配される.現場で外力そのものが計測されることがほとんどない状況を考えると,変位や加速度といった振動応答から外力を推定するというプロセスが不可欠である.振動の発生メカニズム,つまり動的システムを理解してもらうために,例題を示しながら,外力と振動応答との関係を説明する. さらに,振動問題としてたびたび技術者を困らせる共振について,エネルギー的な観点から解説し,共振現象が物理的 (本質的) に理解できるように講義を進める. 振動発生メカニズムが理解できれば,次は,具体的な対策を考えることになる.振動系を構成する質量,ばね,減衰が,振動応答にどのような影響を与えるかをまず説明する.さらに,構造物の高剛性化ための基本的な考え方である「力の流れ」について解説する.また,高ダンピング設計の基本的な考え方にも言及する.