民生部門のエネルギー消費量が伸び続けています。CO2の大幅削減のためには、機器の効率向上だけでは限界があります。熱源についても再生可能エネルギー利用への転換が必須であることはいうまでもありません。再生可能エネルギーの大幅な利用拡大において最も現実的で効果が高いのは高効率ヒートポンプと蓄熱の導入であると考えます。再生可能エネルギーの中でも地中熱は、蓄熱利用に加え、熱源としての安定性や利用場所の普遍性からドイツ以北の欧州や北米ではヒートポンプの熱源として利用が大きく進んでいます。 一方、我が国でも、少しずつですがその導入価値が認知されつつあり、環境省なども冷房排熱を地中へ吸収させることがヒートアイランド抑制の一助となるという理解のもと、本システムの導入を推進していることもあり、ここ数年、導入件数が年々増加しています。 本講演では、まず地中熱利用の考え方について概説した後、地中熱ヒートポンプシステムの世界的状況を説明して大規模システムの実例について紹介します。次に、地中熱ヒートポンプシステムの計画・設計のポイントについて順を追って解説すると共に、筆者らがコミッショニングに参加している地中熱利用システムの実測データから省エネルギー性と環境性など導入効果について紹介します。