ヘルシンキ宣言は被験者に発現した健康被害対する補償の問題について長く沈黙を守ってきましたが、2008年のソウル改訂では、「研究の計画書に補償と治療の方針を記載する」ことを求め、初めて補償問題に言及しました。
さらに、本年は、2月-3月に東京で開催された専門家会議で補償問題への取り組みを強化する方針が示された後、10月の世界医師会大会で「適切な補償と治療が保証されなければならない」とする改訂案が採択されました。
又、最近の治験事故裁判では新たな争点が提起されたことは記憶に新しいと思われます。これらを踏まえ、被験者の方に安心して治験に御参加いただくために治験依頼者に求められる説明責任について私見をお話したいと思います。
- 日本の治験補償の特徴と実態
- 諸外国にはない二つの特徴と実態
- 日本と対照的な諸外国の制度
- 「ヘルシンキ宣言2013年改定」と「最近の治験事故判決」の影響について
- GCP省令における“補償”の意味
- 近代の経済の発展を支えてきた過失責任原則及びその行き過ぎを修正するための生まれた懸念
- 無過失責任補償というときの補償の範囲と金額
- GCP省令でいう「補償」に関する関係者の解釈の違い
- ヘルシンキ宣言2013年改定の行方及び最近の治験事故の裁判事例
- 諸外国との違いを踏まえた合理的な補償基準の検討
- 一つのプロトコルを用いて複数の国で実施される国際共同治験における補償に関しての公平性の問題点
- 安心して治験に参加していただくためにいかに説明責任を果たすか
- 保険外併用療養費 (生保の方の治験参加等) に関する通知について