軟質塩化ビニールに使用されているフタル酸エステル系可塑剤は、外因性内分泌撹乱物質 (通称:環境ホルモン) や毒性を指摘されていたが、近年ではアレルゲン物質としても危惧されている。またDMFやトルエン等の有機溶剤を用いた従来型ウレタン合成皮革もヨーロッパでは排除されつつある。作業環境、大気環境、シックハウス、アレルゲン等の問題が少ないとされる水性ウレタン、ホットメルトウレタン、TPE (ウレタン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー等) 等を用いたレザーに中国でも急速に置き換わりつつある。さらに移動物体の軽量化が大きなテーマとなり、軽いオレフィン系エラストマーの追い風になっている。 本講座ではChinaPlas2013、K2013等の最新情報をもとに技術トレンドを明確にして、熱可塑性樹脂層や熱可塑性エラストマーの応用と展開を解説する。
- 最近の動向
- 展示会情報:K2010,K2013C,hinaPlas2012 (上海) , 2013 (広州)
- 自動車内装材:熱可塑性エラストマー射出成形インパネ,布施真空TOM等の新しい成形工法,
ウレタン系やスチレン系エラストマーのパウダースラッシュ成形の増加,多孔質合成皮革等の新技術紹介
- グローバル化:アメリカ,中国,韓国,タイ等の状況
- 環境:LCA (ライフサイクルアセスメント) 、軽量化、バイオ、VOC (ボラタルオーガニックコンパウンズ) 等
- 熱可塑性エラストマーの概要
- 従来タイプ
- オレフィン系 (TPV、p-TPV、r-TPO)
- スチレン系 (SBS,SEBS,SIS)
- ウレタン系 (TPU<エステル系,エーテル系,ポリカ-ボネート系>)
- ポリエステル系 (TPEE)
- 塩ビ系 他
- 新規熱可塑性エラストマー
- Dow Chemical (エンゲージ,バーシファイ,インフューズ等)
- LANXESS (レバプレン)
- 電気化学工業 (新規スチレン系熱可塑性エラストマー)
- 三井化学 (ノティオSN)
- アクリル系
- 従来材から熱可塑性エラストマーへの移行
- 軟質塩ビからの代替え
フタル酸エステル系可塑剤=内分泌撹乱物質の疑惑から毒性とアレルギー物質として懸念されている。
塩ビ=ダイオキシンの悪いイメージが定着してしまった事により軟質塩ビは非塩ビ化が進む。
自動車や住宅等の密閉空間では顕著。
- 脱溶剤化プロセスの時代へ
- ウレタン合皮の脱溶剤化への流れ:DMFフリー
- 表面処理剤の水性化動向:NMPフリー
- UV・EB硬化塗料
- 熱硬化性樹脂・ゴムからの代替え
ホルムアルデヒド等のVOC問題、リサイクル性、架橋反応による低生産性、
臭い、大量の熱安定剤処方による白化現象等の問題を解消。
- 省スペース・省エネプロセス
オープンプロセス (カレンダー成形、コーティング成形、パウダースラッシュ成形) から
クローズドプロセス (射出成形、押出成形) /オーブン (乾燥炉) レスプロセスへ。
- 各分野への熱可塑性エラストマーの適用
- 自動車分野
- 自動車内装表皮材向け熱可塑性エラストマー
IP (インストルメントパネル) ,ドアパネル,コンソールボックス蓋,シートバック等成形品への適用の留意点
- 配合 (TPOの選定/ドアアッパー、コンソールボックス蓋は耐油性が要求される)
- 押出し成形 (押出機、Tダイの選定/リサイクル向上が利益を出すためのポイント)
- コロナ処理 (コロナ処理機の選定)
- 表面処理 (表面処理剤と処理機の選定/水性化)
- 絞押 (ツートーン表現方法)
- 成形 (TOM工法等の真空成形、低圧射出圧縮成形、パウダースラッシュ)
- 物性 (耐光、耐熱、低エミッション)
シートカバー (座席) 、トノカバー等レザー類への適用の留意点
- 配合 (耐摩耗配合、難燃処方)
- 耐摩耗性 (架橋タイプ表面処理剤で補完)
- 防汚性 (白系のシートの増加)
加飾部品
- 外装 (グラスランチャンネルのTPV化 他)
- エンジンルーム (射出成形可能なHNBRの登場)
- 住宅 (化粧シート,床材,異形押出 他)
- 電気 (太陽電池封止材,スピーカーコーンエッヂ材他)
- その他 (医療、ロボット等)
- 最近の開発技術と今後の展開
- 射出成形 射出発泡成形等
- SCF (超臨界流体) の応用
- 熱可塑性エラストマーへの電子線照射技術
- 熱可塑性エラストマーの発泡技術
- バイオエラストマーの開発状況
- 炭素繊維強化プラスチック (CFRP) の応用
- ロタキサンの用途開発
- 年の展望