高分子自己修復材料・自己修復コーティング材料技術の開発動向

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本セミナーでは、高分子材料及びコーティングの自己修復メカニズム・技術を解説し、実用・商品化の事例を紹介し、また、多様分野での高分子自己修復研究へのニーズ、多様な自己修復メカニズム、高分子自己修復材料が実用されている現状について解説いたします。

日時

開催予定

プログラム

第1部 高分子系自己修復材料・自己修復コーティングのメカニズムと応用・製品化

(2013年9月25日 (水) 13:00~16:30)

 人為的な修理が困難な宇宙機器や航空機用等の先端高分子材料の自己修復材料化が研究開発の主対象であった。それが、高分子材料製品の長寿命化や再使用のための自己修復化へと社会が必要とする高分子材料の自己修復化へと研究対象が広がり、最近では、自動車の塗装やパソコン画面の擦り傷や凹みなどの美観を維持するための自己修復高分子材料が商品化されるようになった。
このような高分子材料及びコーティングの自己修復メカニズム・技術を解説し、実用・商品化の事例を紹介する。高分子材料の自己修復が対象とするのは、破損、機能喪失、美観などであり、使用機器や目的により対象は異なる。修復対象や目的により、用いる修復メカニズムも異なる。
破損等の修復には分散修復剤、機能喪失には架橋の切断・再結合、美観の維持には形状記憶効果など利用される。このように多様分野での高分子自己修復研究へのニーズ、多様な自己修復メカニズム、高分子自己修復材料が実用されている現状について解説する。

  1. 自己修復材料の研究開発の現状
    1. 米国における宇宙開発や国防のための自己修復材料の研究開発
    2. ヨーロッパにおけるインフラや生活環境のための自己修復材料の研究開発
    3. 我が国における消費者ニーズ対応の自己修復材料の研究開発
  2. 高分子材料の原子・分子レベルの自己修復化とメカニズム
    1. 原子レベルの自己修復、主鎖切断と再結合
      1. 原子レベルの損傷と損傷の進展・破壊
      2. ポリフェニレンエーテル (PPE) の自己修復
      3. ポリエチレンテレフタレート (PET) の自己修復
    2. 分子レベルの自己修復、主鎖間の架橋の修復
      1. 主鎖間の架橋の切断と再結合
      2. ディールスアルダー反応による自己修復
      3. ディールスアルダー反応自己修復の特徴と応用
      4. 水素結合をもつ超分子高分子の自己修復
      5. イオン結合等の物理的な架橋による自己修復
      6. イオン結合の自己修復効果の応用
  3. 高分子材料のマイクロクラックの自己修復
    1. 修復剤内包カプセル分散による自己修復
      1. 修復材内包カプセルの作製方法
      2. 修復剤内包カプセルによるクラックの自己修復
      3. クラックの自己修復効果の計測と評価
      4. 修復剤内包カプセル分散による自己修復の実用化の課題
    2. 修復剤内包ファイバー配向による自己修復
      1. 修復剤内包ファイバー配向の複合材料
      2. 修復剤内包ファイバー配向複合材料の自己修復効果と航空機への応用の期待
  4. 表面コーティングの自己修復
    1. 形状記憶効果を利用した自動車用塗料の自己修復
      1. ウレタンの弾性ひずみ回復による塗料の擦り傷と凹みの自己修復
      2. 水素結合効果を利用した塗料の擦り傷と凹みの自己修復
    2. カプセルを分散させた塗料によるクラックの自己修復
    3. 紫外性照射を利用した塗料のクラックの自己修復
    4. 毛細血管状導管の作り込みによる表面コーティングの自己修復
  5. 自己修復材料の実用化・商品化事例
    1. 自動車の自己修復コーティング塗装
    2. ノートパソコン筐体の自己修復コーティング
    3. 自己修復液晶保護フィルム
    4. 自己修復遮水シート
    5. 自己修復自動車タイヤ
  6. 今後期待される自己修復材料
    1. 環境・エネルギー問題を軽減する自己修復材料
      1. 高分子材料のリサイクルを可能にする高分子自己修復材料
      2. 高分子材料を長寿命化させる自己修復材料
    2. 資源問題を軽減する自己修復材料
      1. 住宅の耐久性や長寿命化のための高分子材料の自己修復
      2. 日常品の自己修復化による耐久性と長寿命化
    3. 生活を快適にする自己修復材料
      1. 表面キズを消失させる自己修復塗料
      2. 表面の汚れを自律的に除去する自己修復材料
    4. 自己修復生体材料
      1. 生体材料の生体内での使用に伴う傷や剥離を修復させる自己修復生体材料
      2. 新たな材料と機能を用いた自己修復生体材料
    5. 再生医療の概念を手本とする自己修復材料

第2部 自己および光修復能を有する機能性ゲルの開発と応用

(2013年9月26日 (木) 10:30~12:00)

 ゲルは、医療や食品などの広範な分野において利用されており、今後の更なる材料研究の進展と用途開発が期待されています。これまでに我々は、機能性材料を意味する「スマートマテリアル」をキーワードとし、その一つの代表例である機能性ゲルとその自己修復性に注目した研究を展開しています。  本講演では、1) 新規電解質ゲル化剤を用いた機能性ゲルと自己修復性、2) 微粒子/液晶複合ゲルと光修復性に関する最近の研究成果をご紹介します。

  1. 自己修復性材料
    1. 自己修復性材料の定義と分類
    2. 自己修復性材料の位置付けと用途
  2. 自己修復性材料の例
    1. 高分子系材料
      1. マイクロカプセル系:高分子重合反応
      2. 可逆結合系:共有結合の熱による組み換え (Diels-Alder反応)
      3. 可逆結合系:共有結合の光による組み換え
      4. 可逆結合系:配位結合の光 (熱) による組み換え
    2. 機能性ゲル材料
      1. ヒドロゲル材料-1
      2. ヒドロゲル材料-2
  3. トピック1:有機電解質ゲル化剤を用いた自己修復能を有する機能性ゲル材料
    1. ヒドロゲル材料
    2. イオン液体ゲル材料
    3. まとめ
  4. トピック2:光修復能を有する微粒子/液晶複合ゲル材料
    1. 液晶物理ゲルの基礎と機能
    2. 微粒子/液晶複合ゲル材料の基礎と機能
    3. 微粒子/液晶複合ゲル材料の動的粘弾性
    4. 液晶相構造の多様性を活かしたゲル物性変調の可能性
    5. 光損傷修復の原理と実際
    6. 課題と今後の展望
    7. まとめ
  5. まとめ

第3部 自己修復性防食コーティングの開発と応用

(9月26日 (木) 12:45~14:15)

 金属材料の腐食を防止する方法にコーティング処理があり、欠陥が生じた場合に新たな防食皮膜が自然に形成する自己修復性が有効である。各種の高分子材料、ナノ粒子、pH感受性有機補修剤、微粒子コンポジットポリマーの特性を利用した自己修復性防食コーティングについて述べる。

  1. 金属材料の腐食現象
    1. 腐食の基礎、アノード反応、カソード反応
    2. 腐食の電気化学的評価方法
  2. 自己修復性防食コーティングとは
    1. 自己修復性防食コーティングの開発思想
    2. 修復剤
    3. コーティングの構造
    4. 修復のドライビングフォース
  3. 自己修復ポリマーコーティング
    1. 各種ポリマーコーティングの自己修復性
    2. 金属粒子添加の効果
  4. フルオロカーボン自己修復性表面処理
    1. 各種フルオロカーボンの自己修復性
    2. 最適条件の検討
  5. ナノ粒子と有機補修剤による自己修復コーティング
    1. ナノ粒子による構造皮膜
    2. 自己修復メカニズム
  6. 微粒子コンポジットポリマーによる自己修復性
    1. 微粒子添加の効果
    2. 自己修復メカニズム

第4部 ポリウレタン(PUR)を利用した自己修復塗料・コーティング剤の設計

(9月26日 (木) 14:30~16:00)

 洗車機やブッシュ走行などによる車の塗装表面に生じる擦り傷は、車の美観を著しく損ないやっかいなことである。この擦り傷を時間の経過とともに復元する自己修復機能を持つ塗膜が開発され、ある種の車種に採用されている。この自己修復機能は、ポリウレタン原料を選択し、ポリマーの形状記憶を発現させることで実現している。

  1. ポリウレタン (PUR) とPUR塗料原料
    1. ポリウレタンとは
      • 構造
      • 用途・歴史
    2. PURの原料系
      • イソシアネート
      • ポリオール
      • その他
  2. PUR塗料とその特徴、構造設計の考え方
    1. 塗膜の硬化システム
      • 2液常温硬化
      • 1液 焼き付け硬化
      • UV硬化
        1. 分散媒の違い
        2. 溶剤型
        3. 水性
    2. 塗膜性能
      • 一般
      • 耐擦り傷性
  3. 特性を生かしたPUR塗料の用途・歴史と現在
    1. 各種用途
    2. 自動車用途
  4. 自己修復性と耐擦り傷性、自動車への適用
    1. 耐擦り傷性付与
      • 原料系
      • 評価方法
    2. 自己修復性付与
      • 原料系
      • 塗膜性能と設計
  5. ハードコートとの差異と今後の動向
    1. ハードコートの現状
    2. 自己修復とハードコート
    3. 今後の動向

会場

大田区産業プラザ PiO
144-0035 東京都 大田区 南蒲田1-20-20
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